2022年11月3日木曜日

問題を解く時の思考法のヒント

国家試験が終わると「知識が足りなかった。難しかった」という声がネットに上がります。


過去問よりも本試験のほうが難しく感じるため,そのような意見が出るのでしょう。


しかし,その思いは,今まで受験してきたすべての人が感じたはずです。


過去問のほうが易しく感じるのは,後追いで参考書に加えられた内容を先に勉強しているからです。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題22 社会福祉法で規定された福祉サービスの基本的理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 個人の尊厳の保持を旨とし,その内容は,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならない。

2 全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。

3 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する。

4 地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される。

5 老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与する。


こういった問題を目にすると「基本理念をしっかり覚えておけばよかった」という気持ちになることでしょう。


タクソノミーⅡ型・Ⅲ型の問題では,受験者に考えることを求めます。


この問題は,知識が答えになるタクソノミーⅠ型に分類されるものですが,思考することで正解できる可能性が高まるタイプです。


この問題は,与えられたヒントから推測し,答えを出すことで正解できます。

ただし,その考え方を覚えたところで同じ問題は出題されないので意味はありません。必要なのは柔軟な思考を持つことです。


それでは,解説です。


1 個人の尊厳の保持を旨とし,その内容は,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならない。


これが正解ですが,この時点では正解かどうかはわかりません。


冷静に△をつけて,次の選択肢に進みます。


2 全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。


障害という文字が含まれているので,障害者に関連するものであるのではないかと推測することができます。


正しくは,障害者基本法の記述です。


3 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する。


これは,多くの人がわかるのではないかと思います。


最低限度の生活保障自立の助長から,生活保護法であることがわかります。

これが生活保護法であることがわからない人は,本当に知識不足の人だと考えられます。


その知識量では国試に合格することは厳しいと言えるでしょう。

ひたすら知識をつけていくことが求められます。


4 地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される。


高齢者という文字が含まれているので,高齢者に関連するものであるのではないかと推測することができます。


正しくは,医療介護総合確保推進法です。


医療介護総合確保推進法が地域包括ケアシステムの根拠法です。


5 老齢障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与する。


老齢障害死亡という3つから連想できるのは,年金でしょう。


公的年金には,国民年金と厚生年金がありますが,この記述があるのは,国民年金法です。


ということで,ほかの4つは消去できそうなので,選択肢1が残ります。


〈今日の一言〉

国家試験会場では,誰もヒントを教えてくれる人はいません。

すべて自分で考えて答えを出さなければなりません。まさしくソーシャルワークで求められているものです。

そういった点で,柔軟な思考ができ,様々な国家試験問題にアジャストできることは,ソーシャルワーク実践の基礎となるものだと言えます。

国家試験に何度も不合格になっている人が「知識不足だった」と思うのは,また失敗することにつながるので注意が必要です。

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