2022年11月10日木曜日

イギリスの新救貧法

 今回も相変わらず,イギリスの歴史に取り組みます。イギリスの歴史は出題頻度が高いために,過去問は豊富にあります。


前説なしに今日の問題です。


第33回・問題25 イギリスの新救貧法(1834年)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 劣等処遇の原則を導入し,救貧の水準を自活している最下層の労働者の生活水準よりも低いものとした。

2 パンの価格に基づき定められる最低生計費よりも収入が低い貧困者を対象に,救貧税を財源としてその差額を給付した。

3 貧困調査を実施して,貧困は社会的な要因で発生することを明らかにした。

4 働ける者を労役場で救済することを禁止し,在宅で救済する方策を採用した。

5 貧困の原因として欠乏・疾病・無知・不潔・無為の5大巨悪を指摘した。


古典的な問題ですが,今でもこんな出題をするのだという新鮮な気持ちになった問題です。


スタンダードなものをひたすら覚えることの重要性を教えてくれた問題です。


それでは,解説です。


1 劣等処遇の原則を導入し,救貧の水準を自活している最下層の労働者の生活水準よりも低いものとした。


これが正解です。


〈救貧法改正(新救貧法)の2大ポイント〉

・救済基準の全国統一

・劣等処遇の原則


2 パンの価格に基づき定められる最低生計費よりも収入が低い貧困者を対象に,救貧税を財源としてその差額を給付した。


これは,スピーナムランド法のことを述べたものです。


3 貧困調査を実施して,貧困は社会的な要因で発生することを明らかにした。


これは,ブースの貧困調査のことを述べたものです。


4 働ける者を労役場で救済することを禁止し,在宅で救済する方策を採用した。


これは,ギルバート法のことを述べたものです。


5 貧困の原因として欠乏・疾病・無知・不潔・無為(怠惰)の5大巨悪を指摘した。


これは,ベヴァリッジ報告のことを述べたものです。


ベヴァリッジは,5大巨悪を以下の方策で根絶することを考えました。


窮乏 ➡ 社会保険制度

疾病 ➡ 保健・医療制度

無知 ➡ 教育・科学制度

不潔 ➡ 住宅・環境制度

無為(怠惰) ➡ 労働・完全雇用制度


ベヴァリッジ報告では社会保障制度を「社会保険」「国家扶助(国民扶助)」「任意保険」で構成することを提唱しています。


任意保険が含まれていることが意外に感じる人もいると思いますが,国民生活に国家が必要以上に介入することを避けたためです。


ベヴァリッジ報告は,次回に改めて取り上げたいと思います。

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