今回は,テンニースが提唱した,ゲマインシャフトとゲゼルシャフトを学びます。
ゲマインシャフト (共同社会) |
ゲゼルシャフト (利益社会) |
自然的な「本質意志」に基づいて結合する基礎的な集団です。 家族,地域の仲間,ムラなどがゲマインシャフトに当たります。 血縁,地縁,宗教などによって結合します。 ゲマインシャフトでは,個人よりも集団が優位な社会となるのが特徴です。 |
人為的(自然的ではないこと)な「選択意志」に基づく機能的な集団です。 会社,大都市,国などがゲゼルシャフトに当たります。 共通の目的をもって結合します。 ゲゼルシャフトでは,集団よりも個人が優位な社会となるのが特徴です。 |
語弊を恐れずに言えば,ゲマインシャフトは田舎的な社会,ゲゼルシャフトは都会的な社会です。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題17
社会集団などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団を指す。
2 第二次集団とは,親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
3 内集団とは,個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団を指す。
4 ゲマインシャフトとは,人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
5 公衆とは,何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
原点回帰したような問題です。遠い昔は,こんな問題がよく出題されていたものです。
第33回国家試験では,既に新しいカリキュラムに向けた準備が始めていたので,このような出題になったように思います。
こういった問題を確実に正解できることがますます重要になります。出題数が少なくなるためです。
それでは,解説です。
1 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団を指す。
準拠集団とは,思考や判断するときに準拠(参考にするという意味)する集団です。
共同生活の領域を意味するのは,コミュニティです。
ヒラリーが94のコミュニティの定義を分析すると,
・社会的相互作用
・空間の限定
・共通の絆
の3つが共通することを発見しました。
空間が限定されない形でコミュニティが展開されるのは,「コミュニティ解放論」です。
因みに,国家試験対策としては,マッキーバーが提唱した「コミュニティ」と「アソシエーション」とセットで覚えておくと良いです。
アソシエーションは,テンニースのゲゼルシャフト,後から出てくる第二次集団とほぼ重なります。
異なるのは,家族です。
家族は,ゲマインシャフト,第一次集団に位置づけられますが,マッキーバーは,アソシエーションに位置づけたのが特徴です。
2 第二次集団とは,親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。
第二次集団は,第一次集団と対になる概念です。
第二次集団は,間接的な結びつきを特徴とします。学校,教会,会社などが第二次集団です。
第一次集団は,親密で対面的な結びつきを特徴とします。
3 内集団とは,個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団を指す。
内集団は,外集団と対になる概念です。
内集団は,「われわれ」と認識する集団です。
外集団は,「彼ら」と認識する集団です。ここでいう「個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団」です。
それに対して,内集団には,好ましく思えます。これを内集団ひいき(あるいは内集団バイアス)といいます。
4 ゲマインシャフトとは,人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。
ようやく,今日のテーマが登場しました。
これが正解です。
ゲマインシャフト(共同社会)は,本質意志に基づく集団です。
ゲゼルシャフト(利益社会)は,選択意志に基づく集団です。
5 公衆とは,何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。
公衆は,群衆と対になる概念です。
何らかの事象への共通した関心をもつ人々の集まりであることは共通します。
公衆は,理性的なのが特徴です。
群衆は,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々であるのが特徴です。
公衆と群衆を並べて考えてみると,暴動を起こしそうなのは群衆だと感じませんか。
公衆には,そのように殺気や熱情は感じられません。