身体障害者手帳は,身体障害者福祉法に規定されています。
〈障害の種類〉
①視覚障害 ②聴覚又は平衡機能の障害 ③音声機能,言語機能又はそしゃく機能の障害 ④肢体不自由 ⑤内部障害 ・心臓機能障害 ・腎臓機能障害 ・呼吸器機能障害 ・膀胱・直腸機能障害 ・小腸機能障害 ・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害 ・肝臓機能障害 |
身体障害者というと,肢体不自由や視覚障害,聴覚障害のイメージが強いですが,そのほかにもこれだけの種類があります。
今日は「内部障害」にスポットを当てたいと思います。
特に注意したいのは,「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害」
内部障害の種類を頭に入れたところで,今日の問題です。
第33回・問題5
障害に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 後天性免疫不全症候群による免疫機能障害は,内部障害に該当しない。
2 「難病法」で定められた指定難病患者の全てに,身体障害者手帳が交付される。
3 外傷性脳損傷による注意力の低下は,高次脳機能障害の症状の一つである。
4 一つの疾患から,複数の身体機能の障害を来すことはない。
5 糖尿病による視覚障害では,身体障害者手帳を取得できない。
(注) 「難病法」とは,「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことである。
問題づくりが下手なので,それほど難しくない問題ですが,一応解説していきます。
1 後天性免疫不全症候群による免疫機能障害は,内部障害に該当しない。
早速,今日のテーマの内部障害の登場です。
これは誤りです。
後天性免疫不全症候群は,いわゆるエイズ(AIDS)のことです。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することで,エイズを発症します。
現在は,治療薬が進化して,HIVに感染しても生活できるようになってきているために,内部障害に加えられたものです。
ヒト免疫不全ウイルスと出題していれば,迷うことなく,消去できたと思います。しかし,この問題は,後天性免疫不全症候群と出題されたために若干難しくなりました。
2 「難病法」で定められた指定難病患者の全てに,身体障害者手帳が交付される。
難病法の難病は,発病の機構が明らかでなく,かつ,治療方法が確立していない希少な疾病であって,当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいいます。
筋萎縮性側索硬化症のような難病は,身体障害者手帳が交付されます。
しかし,対象になる難病はほんの少しです。
3 外傷性脳損傷による注意力の低下は,高次脳機能障害の症状の一つである。
これが正解です。
高次脳機能障害は,外傷性脳損傷などによって生じる障害です。
〈高次脳機能障害の主な症状〉
・注意障害 ※この問題の注意力の低下にあたる
・記憶障害
・感情障害
・遂行機能障害 など
近年は,高次脳機能障害の概念が広く知られてきていますが,少し前までは,周囲の人に理解が得られずに辛い経験をした人が多くいました。
4 一つの疾患から,複数の身体機能の障害を来すことはない。
これは誤りです。
例えば,脳性麻痺であれば,肢体不自由,呼吸器機能障害などを合併することもあります。
5 糖尿病による視覚障害では,身体障害者手帳を取得できない。
これも誤りです。
視覚障害となった理由は問われません。日本はそんなに冷たい国ではありません。
なお,視覚障害は,視力の低下だけではなく,視野の欠損(2分の1以上)でも身体障害者手帳の交付対象となります。
〈身体障害者手帳の交付〉
身体障害者手帳の交付を希望する場合,市町村に申請します。都道府県(指定都市)が設置する身体障害者更生相談所が障害等級を定めます。
手帳を交付するのは,都道府県知事(指定都市の長)です。
身体障害の場合は,身体障害者手帳の交付を受けないと身体障害者にはなりません。
障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用する場合は,身体障害者手帳の交付が必要です。
知的障害者と精神障害者は,手帳の交付を受けずとも,障害があれば障害者となり,障害福祉サービスを利用することができます。