今回は,ラベリング理論を学びます。
ラベリング理論は,なぜ人は逸脱するのかを研究する逸脱行動理論の一つです。
この理論では,周りの人がレッテルを貼ることで逸脱すると考えます。
そのため,問題があるのは,本人よりもむしろ周囲だということになります。
逸脱行動理論
ラベリング理論 |
周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考える。 |
文化学習理論 |
逸脱者と交流し,逸脱行為を学ぶことで逸脱すると考える。 |
機会構造論 |
合法的ではない機会に多く接触することで逸脱すると考える。 |
アノミー論 |
文化的発展によって人々の欲求が高まるが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考える。 |
社会統制理論 |
人の絆があるとき,仕事や学業などに打ち込んでいるときは,逸脱が減ると考える。 |
それでは,今日の問題です。
第33回・問題21
次のうち,マートン(Merton,R.K.)が指摘したアノミーに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。
2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。
3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。
4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。
5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。
逸脱行動理論の総合問題となっています。
逸脱行動理論を学ぶ上で,とても重要な問題です。ここでは5種類の理論が登場していますが,その中で特に重要なのは,今日のテーマのラベリング理論です。
それでは解説です。
1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。
これは,構築主義を述べたものですが,覚える優先度は低いです。
2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。
これは文化学習理論といいます。
文化学習理論では,不良グループに入っていることで不良行為を学んでいくことで逸脱すると考えます。
3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。
これが正解です。
アノミーとは,無秩序状態を意味します。
アノミー論では,手に入れたいものがあっても,それを手に入れる手段がない時に,逸脱すると考えます。
4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。
これが今日のテーマのラベリング理論です。
この理論では,前説のように逸脱を生み出すのは,周囲の人であると考えます。
人は誰もがミスするものです。
刑罰を受けた人の再犯率は高いですが,その理由の中には,周りの人が色眼鏡で見ることもあります。
円滑な社会復帰を果たすためには,ラベリング理論の理解が必要です。
5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。
これは,社会的統制理論のことです。
この理論では,人の絆が弱くなったときなどに逸脱すると考えます。