〈社会福祉士の国家試験に出題されている社会的ジレンマの例〉
共有地の悲劇 |
多くの人が利益を追求した結果,全体の利益が低下することです。 |
フリーライダー |
負担することなく,公共財を使うことです。 公園の水道水を使って自分の車を洗車することなどがフリーライダーです。みんなが同じことを行うと,水道事業が成り立たなくなってしまいます。 |
囚人のジレンマ |
協力し合うと利益になるものを,相手を信じることができずに行動すると,全体の利益が低下することです。 |
何となくでも,社会的ジレンマとはどういうものなのか,わかりますか?
社会的ジレンマとは
自分の利益のみを考えた自分勝手な行動が,全体の利益が低下すること
社会的ジレンマを解決するための方法として,選択的誘因があります。
選択的誘因とは,非協力であるよりも,協力する行動をとった方が得だと思わせるような方策のことです。
これは,なかなか難しいものです。
例えば,ふるさと納税を考えます。
ふるさと納税すると,所得税控除を受けることができます。
それだけでは弱いので,各市町村は返礼品を競い合っています。
さらに,仲介サイトを通すと,ポイントが付与されます(今後,廃止)。
内発的動機づけだと行動が長続きしますが,何かの報酬がもらえることを期待する外発的動機づけだと行動を長続きさせるのは簡単ではありません。
それらのバランスを考えることが必要です。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題20
次のうち,社会的ジレンマの定義として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 目標を効率的かつ公正に達成するための手段として制定されたルールが,それ自体目的と化してしまうことで,非効率な結果が生み出されている状況
2 文化を介して不平等や序列を含んだものとしての社会秩序が維持・再生産されている状況
3 信頼関係,互酬性の規範,人的ネットワークなどが整えられることによって人々に広く便益をもたらしている状況
4 協力的な行動には報酬を与え,非協力的な行動には罰を与えることで,協力的行動が合理的であるようにする状況
5 各個人が自らの利益を考えて合理的に行動した結果,集団あるいは社会全体として不利益な結果を招いてしまう状況
試験委員は問題を作るのが簡単で,そして,受験生は解くのが難しいタイプです。
それぞれの文章に嘘はないからです。
それでは解説です。
1 目標を効率的かつ公正に達成するための手段として制定されたルールが,それ自体目的と化してしまうことで,非効率な結果が生み出されている状況
これは,官僚制の逆機能のことです。
官僚制は,組織を機能させるための仕組みのことですが,それが行き過ぎると,ルールを守ることが目的となってしまうことがあります。
何のためのルールなのかをよくよく考えて,仕組みを正常化することかが必要です。
2 文化を介して不平等や序列を含んだものとしての社会秩序が維持・再生産されている状況
これは,文化資本のことです。
3 信頼関係,互酬性の規範,人的ネットワークなどが整えられることによって人々に広く便益をもたらしている状況
これは,ソーシャルキャピタル(社会関係資本)のことです。
4 協力的な行動には報酬を与え,非協力的な行動には罰を与えることで,協力的行動が合理的であるようにする状況
これは,選択的誘因のことです。
5 各個人が自らの利益を考えて合理的に行動した結果,集団あるいは社会全体として不利益な結果を招いてしまう状況
これが正解です。