今回は,コミュニティ解放論を学びます。
ヒラリーは,94のコミュニティの定義を分析した結果,それらに共通するものとして
・社会的相互作用
・空間の限定
・共通の絆
の3つがあることを発見しました。
ヒラリーが分析したのは,1955年のことです。ずいぶん昔の話です。
現代は,その時に比べると,交通も通信手段も大きく発達しています。
ウェルマンは,「空間の限定」がない新しいコミュニティが展開することなどをさす「コミュニティ解放論」を論じました。
この学習部屋には投稿などを設けていませんが,もしここで国家試験の勉強の悩みを語り合い,時には議論などができる場になっていたとすると,これも新しいコミュニティの形だと言えるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題16
都市化の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 フィッシャー(Fiscer,C.)は,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論を提起した。
2 ワース(Wirth,L.)は,都市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起した。
3 クラッセン(Klaassen,L.)は,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論を提起した。
4 ウェルマン(Wellman,B.)は,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論を提起した。
5 バージェス(Burgess,E.)は,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論を提起した。
都市社会学の出題は,近年はあまりされてこなかったこともあり,なかなか新鮮な問題です。
それでは,解説です。
1 フィッシャー(Fiscer,C.)は,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論を提起した。
フィッシャーが提起したのは,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論です。
東京のアキバは,さまざまな下位文化(サブカル)の聖地です。
マンガ
アニメ
アイドル などなど
それそれに自分の推しがあるでしょう。推しごとに仲間が集まります。
フィッシャーがいつごろに下位文化理論を提起したのかは知りませんが,亡くなったのは1983年のことなので,先見の明があったと思います。
因みに,いわゆるサブカルはステレオタイプの意味を持つ(オタク文化など)ので,本来のサブカルチャーとは意味が少し違います。
スポーツで言えば,オリンピック競技となったブレイキンなどは,本来のサブカルチャーと言えるでしょう。
日本でもブレイキンの聖地と呼ばれるところがありますね。
フィッシャーは,アメリカのこういった文化を見て,下位文化理論を論じたのかもしれません。
2 ワース(Wirth,L.)は,都市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起した。
これが正解です。
ワースは,市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起しました。
アーバニズムは,都市だけにみられるものではなく,近代化によって,地方でも起こります。
アーバニズムが進行すると,地域の特徴がどんどん希薄となり,どこも同じような街になっていきます。
幹線道路の写真を撮って,どこの写真であるかを当てさせるクイズがあったなら,判別するのはかなり困難です。これもアーバニズムです。
3 クラッセン(Klaassen,L.)は,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論を提起した。
クラッセンが提起したのは,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論です。
都市の発展段階は
①都市化 (集中する段階)
②郊外化 (分散する段階)
③逆都市化 (さらに分散する段階)
④再都市化 (再び集中する段階)
の4段階です。
この発展段階は何となくわかるように思います。
ただし,東京は,外に出ていく人口はかなり多いですが,流入も多いので,このような段階は踏んでいないように思います。
今後の日本は,人口減少によって,再都市化するのはかなり難しくなっていくのではないかと思います。
4 ウェルマン(Wellman,B.)は,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論を提起した。
ウェルマンが提起したのは,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論です。
これまでの出題の路線と異なった出題ですが,ウェルマンのコミュニティ解放論を覚えておけば消去できるでしょう。
ここで出題されていることは,人と人との直接的なつながりである紐帯(ちゅうたい)が都市では弱くなって,それまでの伝統的な規範(ルール)から解放されるという意味です。
5 バージェス(Burgess,E.)は,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論を提起した。
バージェスが提起したのは,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論です。
これは,中都市でもみることができます。
都市は,外へ外へ広がっていき,都心から同じ距離にある地帯は,同じような人が集まります。
お金のある人は,都心から離れたところに家を建てるからです。
そこがいっぱいになると,さらに郊外に広がっていきます。
逆にお金のない人は,都心に集まります。