近年の国家試験では,法の目的や理念を問う問題が出題されるようになってきています。
しかし,その方の内容がわかっていれば対応できるので,あえて覚えることは必要ではないように思います。
問題で確認してみます。
第33回・問題22
社会福祉法で規定された福祉サービスの基本的理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 個人の尊厳の保持を旨とし,その内容は,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならない。
2 全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。
3 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する。
4 地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される。
5 老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与する。
この問題が出題されたときに受験した人は,この問題を見て慌てたのではないかと思います。
どれだけ勉強しても,新しい出題スタイルのものが出題されます。
そういったものを目にしても心が折れないように,強い気持ちをもつことがとても大切です。
それでは,解説です。
1 個人の尊厳の保持を旨とし,その内容は,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならない。
これが正解です。
設問に「福祉サービスの基本的理念」とあり,この選択肢の中に「福祉サービス」が含まれています。
そのため,知識がなくても,この選択肢を選ぶことができます。
しかし,おそらく今後は,こんなヒントを含めては出題されないでしょう。
とは言っても,法の内容がわかれば何とかなる出題です。
それでは,正解以外のものも解説します。
2 全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。
「障害」が含まれているので,障害系の法律でと推測することができます。
この規定は,そのうちの障害者基本法のものです。
3 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する。
「最低限度の生活を保障」と「自立を助長」は,生活保護の目的です。
つまり,この規定は,生活保護法のものです。
4 地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される。
医療,介護,介護予防,住まいといったものから,地域包括ケアシステムが推測できます。
この規定は,「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(社会保障制度改革プログラム法)のものです。
第4条第1項第4号
政府は、医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図り、効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、今後の高齢化の進展に対応して地域包括ケアシステム(地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。次条において同じ。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう。次項及び同条第二項において同じ。)を構築することを通じ、地域で必要な医療を確保するため、次に掲げる事項及び診療報酬に係る適切な対応の在り方その他の必要な事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
これでわかるように,同法で規定されている地域包括ケアシステムの定義です。
5 老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与する。
「老齢,障害又は死亡」「共同連帯」から,国民年金法,あるいは厚生年金法が推測できます。
この規定は,そのうちの国民年金法のものです。