世界保健機関(WHO)による健康の定義
健康とは,肉体的,精神的及び社会的に完全に良好な状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない。 |
肉体的(身体的) → バイオ
精神的 → サイコ
社会的 → ソーシャル
の側面が良好である状態が,健康です。
アセスメント視点のBPSモデルは,この3点に焦点を当てるものです。
1999年にWHOは,以下の改正案を審議しましたが,現行のものが適切に機能しているいるという理由で,改正には至りませんでした。
健康とは,単に病気や虚弱がないということではなく,身体的,精神的,霊的,社会的に完全に良好な状態にあること。 |
霊的は,スピリチュアル(spiritual)の訳ですが,日本人にはなかなか理解しにくいものです。
現時点(2024年8月)では改正されていませんが,機が熟す時が来たら,将来的には改正されるかもしれません。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題3
健康の概念と健康増進に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 WHOは,健康を身体的,精神的,社会的,スピリチュアルに良好な状態と定義した。
2 「健康日本21」は,一次予防を重視している。
3 健康増進法は,生活習慣病対策を含まない。
4 健康増進は,一次予防には該当しない。
5 健康寿命とは,平均寿命を超えて生存している期間をいう。
健康に関する国際的なものと国内の施策を織り交ぜて出題されているバランスの良い問題です。
しかし,問題のつくり方が若干甘いです。
選択肢3と4は,知識がなくても消去できるからです。
これからは,こういったわかりやすい出題はなくなると考えられます。
それでは,解説です。
1 WHOは,健康を身体的,精神的,社会的,スピリチュアルに良好な状態と定義した。
これは誤りです。
スピリチュアルを加えた健康の定義の改正案は実現せずに現在に至ります。
健康とは,肉体的,精神的及び社会的に完全に良好な状態です。
2 「健康日本21」は,一次予防を重視している。
これが正解です。
一次予防 → 病気にならないこと。
二次予防 → 病気を早期発見し,早期に治療すること。
三次予防 → 病気を悪化させないこと。
健康増進法は,健康増進という名称が示す通り,一次予防を重視したものです。
3 健康増進法は,生活習慣病対策を含まない。
これは誤りです。
健康増進法に従って,メタボリックシンドロームに着目した特定健康診査,特定健康指導が実施されています。
4 健康増進は,一次予防には該当しない。
これも誤りです。
健康増進は,ポジティブな表現の一次予防です。
病気にならないことは,ネガティブな表現の一次予防です。
健康増進と病気にならないことは,表現が異なっていても意味は同じです。
5 健康寿命とは,平均寿命を超えて生存している期間をいう。
これも誤りです。
健康寿命は,国家試験に出題されたものに従うと,介護を受けたり病気で寝たきりになったりせずに自立して生活できる期間をいいます。
WHOの健康の定義の出題からわかること
過去には,以下のように出題されています。
■WHO憲章による健康の定義は,「健康とは,身体的にも精神的にも社会的にもスピリチュアルにも完全に良好な状態をいう」とされている。
■WHO憲章では,「健康とは,身体的,精神的,社会的,そしてスピリチュアル的に完全に良好な状態をいう」と定義された。
■憲章前文の中で,健康とは,身体的,精神的,社会的,政治的に良好な状態であると定義した。
この3つを見ると,身体的,精神的,社会的のあとに余計なものを足して出題されていることがわかります。
このように,列記されているものは,最後の部分に注目することが大切です。
健康の定義に限らず,社会福祉士の国家試験では,よくみられます。