今回は,平成29年版厚生労働白書で示されている社会保障の機能を学びます。
生活安定・向上機能 |
生活のリスクに対応し,国民生活の安定を実現する機能。 失業,老齢,介護などに備えるもの。 |
所得再分配機能 |
社会全体で,低所得者の生活を支える機能。 生活保護などのように現金給付されるものだけではなく,医療サービスや保育などのように現物給付するものもある。 |
経済安定機能 |
景気変動を緩和し,経済を安定させる機能。 年金のように継続的に一定額が給付される制度は,経済不況期でも消費活動を下支えする役割を果たす。 |
それでは,今日の問題です。
第33回・問題50
「平成29年版厚生労働白書」における社会保障の役割と機能などに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 戦後の社会保障制度の目的は,「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが,近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。
2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定義には,社会保険,国家扶助,治安維持及び社会福祉が含まれている。
3 社会保障には,生活のリスクに対応し,生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。
4 社会保障の「所得再分配機能」は,現金給付にはあるが,医療サービス等の現物給付にはない。
5 社会保障には,経済変動の国民生活への影響を緩和し,経済を安定させる「経済安定機能」がある。
前説で答えはわかると思いますが,すべて解説します。
1 戦後の社会保障制度の目的は,「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが,近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。
社会保障制度は,戦前から作られてきましたが,大きく変化するのは,日本国憲法です。
第25条で生存権(最低限度の生活保障)を保障したからです。
これを実現するように,社会保障制度は発展していきますが,社会情勢が大きく変わり,近年では,憲法第13条の幸福追求権を根拠とするように変化してきています。
つまり
「生活の最低限度の保障」から「広く国民に安定した生活を保障するもの」へ
です。
2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定義には,社会保険,国家扶助,治安維持及び社会福祉が含まれている。
社会保障制度審議会の1950年勧告は,社会保障の方法と範囲を定めたものです。
社会保障の方法は
社会保険(財源は保険料),国家扶助(財源は税),社会福祉,そして公衆衛生及び医療 です。
3 社会保障には,生活のリスクに対応し,生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。
これが1つめの正解です。
4 社会保障の「所得再分配機能」は,現金給付にはあるが,医療サービス等の現物給付にはない。
前説に書いたように,所得再分配機能には,現金給付だけではなく,現物給付も含まれます。
5 社会保障には,経済変動の国民生活への影響を緩和し,経済を安定させる「経済安定機能」がある。
これが2つめの正解です。
〈今日のおまけ〉
この問題では出題されていませんが,社会保障制度審議会の1950年勧告では,以下のように述べています。
社会保障の中心をなすものは社会保険制度でなければならない。
扶助制度は,補完的制度としての機能を持たしむべきである。
社会保障の中心は,社会保険であり,社会扶助はそれを補完するものである,ということです。
この考え方は,今もずっと突き通されているものです。
何度も出題されている重要ポイントなので,しっかり覚えておきたいです。