2024年8月29日木曜日

社会保障の機能

 

今回は,平成29年版厚生労働白書で示されている社会保障の機能を学びます。

 

生活安定・向上機能

生活のリスクに対応し,国民生活の安定を実現する機能。

失業,老齢,介護などに備えるもの。

所得再分配機能

社会全体で,低所得者の生活を支える機能。

生活保護などのように現金給付されるものだけではなく,医療サービスや保育などのように現物給付するものもある。

経済安定機能

景気変動を緩和し,経済を安定させる機能。

年金のように継続的に一定額が給付される制度は,経済不況期でも消費活動を下支えする役割を果たす。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題50 

「平成29年版厚生労働白書」における社会保障の役割と機能などに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 戦後の社会保障制度の目的は,「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが,近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。

2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定義には,社会保険,国家扶助,治安維持及び社会福祉が含まれている。

3 社会保障には,生活のリスクに対応し,生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。

4 社会保障の「所得再分配機能」は,現金給付にはあるが,医療サービス等の現物給付にはない。

5 社会保障には,経済変動の国民生活への影響を緩和し,経済を安定させる「経済安定機能」がある。

 

前説で答えはわかると思いますが,すべて解説します。

 

1 戦後の社会保障制度の目的は,「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが,近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。

 

社会保障制度は,戦前から作られてきましたが,大きく変化するのは,日本国憲法です。

 

25条で生存権(最低限度の生活保障)を保障したからです。

 

これを実現するように,社会保障制度は発展していきますが,社会情勢が大きく変わり,近年では,憲法第13条の幸福追求権を根拠とするように変化してきています。

 

つまり

 

「生活の最低限度の保障」から「広く国民に安定した生活を保障するもの」へ

 

です。

 

2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定義には,社会保険,国家扶助,治安維持及び社会福祉が含まれている。

 

社会保障制度審議会の1950年勧告は,社会保障の方法と範囲を定めたものです。

 

社会保障の方法は

 

社会保険(財源は保険料),国家扶助(財源は税),社会福祉,そして公衆衛生及び医療 です。

 

3 社会保障には,生活のリスクに対応し,生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。

 

これが1つめの正解です。

 

4 社会保障の「所得再分配機能」は,現金給付にはあるが,医療サービス等の現物給付にはない。

 

前説に書いたように,所得再分配機能には,現金給付だけではなく,現物給付も含まれます。

 

5 社会保障には,経済変動の国民生活への影響を緩和し,経済を安定させる「経済安定機能」がある。

 

これが2つめの正解です。

 

〈今日のおまけ〉

 

この問題では出題されていませんが,社会保障制度審議会の1950年勧告では,以下のように述べています。

 

社会保障の中心をなすものは社会保険制度でなければならない。

 

扶助制度は,補完的制度としての機能を持たしむべきである。

 

社会保障の中心は,社会保険であり,社会扶助はそれを補完するものである,ということです。

この考え方は,今もずっと突き通されているものです。

 

何度も出題されている重要ポイントなので,しっかり覚えておきたいです。

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