ソーシャルワークにおけるシステム理論は,人は環境との交互作用を行っていると考えます。
人は環境に影響を与え,環境は人に影響を与えます。
原因と結果が明確なことを「直線的」といいます。
原因と結果が明確ではなく,それが循環していることを「円環的」といいます。
〈原因と結果が明確な例〉
勉強をしないので,テストの成績が悪い。
➡ システム理論ではない。
〈原因と結果が明確ではない例〉
子どもが勉強しないので,親が勉強しなさい,と言う。
それによって,やる気がなくなり,さらに勉強しないのでテストの成績が悪くなる。
成績が悪いことが,原因なのか。
親が勉強しなさい,と言うのが原因なのか。
家族システムの場合を考えます。
問題があるように見えるのは,成績が悪い子どもかもしれません。
しかし,子どもにアプローチするのではなく,親(環境)に働きかけることで,問題が解決することもあります。
これが「家族システムズアプローチ」の基本的な考え方です。
それでは,今日の問題です。
第33回・問題99
家族システム論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家族内で生じる問題は,原因と結果が円環的に循環している。
2 各家族員の分化度が高いほど,家族内において相互依存が生じる。
3 家族の内と外は,区別されず連続している。
4 ある家族の全体が有する力は,各家族員が持つ力の総和に等しい。
5 多世代家族において,一つの世代の家族の不安は,別の世代の家族に影響を与えない。
答えは,すぐわかるかもしれませんが,一応解説します。
1 家族内で生じる問題は,原因と結果が円環的に循環している。
これが正解です。
システム理論では,人と環境は交互作用を行っていると考えますが,家族システムという極めて小さなシステムは,交互作用は激しく行われることとなります。
前説で紹介した,成績の悪い子どもの例でわかるように,原因と結果は明確ではありません。
それがここでは「原因と結果が円環的に循環している」と表現しています。
何となくわかってもらえましたか?
2 各家族員の分化度が高いほど,家族内において相互依存が生じる。
各家族員の分化度とは,ほかの家族メンバーに影響を受ける度合いを表現しています。
分化度が低ければ,相互依存を生じやすく,分化度が高ければ,相互依存が生じにくいと言えます。
3 家族の内と外は,区別されず連続している。
その選択肢がこの問題の中で最もわかりにくいものでしょう。
家族は,家族という家族システムを構成しています。
家族メンバーと家族メンバー以外では,当然異なります。
区別はあるでしょう。
この選択肢を下書きにしたと思われる出題が第34回に出題されています。
その問題は次回取り上げます。
4 ある家族の全体が有する力は,各家族員が持つ力の総和に等しい。
家族全体の力は,家族員が持つ力の総和ではありません。
総和よりも小さくなることもありますし,総和よりも大きくなることもあります。
これについては,過去に同じ内容のものが出題されたことがあります。
システムを要素還元主義の立場から,全体は部分の総和であると考える。
5 多世代家族において,一つの世代の家族の不安は,別の世代の家族に影響を与えない。
一つの世代の家族の不安が同居するほかの世代の家族に影響を与えないということはないでしょう。