2016(平成28)年の社会福祉法の改正は,社会福祉法人制度改革がテーマでした。
改革の一つとして,それまで任意で設置される諮問機関であった評議員会を必置の議決機関としたことがあります。
理事会は,業務執行に関する意思決定を行います。
評議員会は,法人運営の基本ルール,体制の決定,事後的な監督を行います。
評議員会の決議内容
・定款の変更 ・理事・監事・会計監査人の選任と解任 ・理事・監事の報酬の決定 など |
それでは,今日の問題です。
第30回・問題119
社会福祉法人に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。
社会福祉法人という公益法人の性格を考えると,社会福祉法人制度改革を知らずとも正解できるように設計された問題となっています。
つまり,丁寧に考えていけば,正解にたどり着くように設計された問題であるということです。
令和元年度カリキュラム改正による国家試験では,こういったタイプの出題は多くなると考えられます。
それでは解説です。
1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
これが正解です。
役員の選任及び解任は,評議員会の決議が必要です。
※社会福祉法人の役員とは,理事と監事のことです(社会福祉法第31条1項第6号)。
2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
社会福祉法人は,その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければなりません。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。
社会福祉法が定める親族等特殊関係者とは,その配偶者若しくは三親等以内の親族その他各理事と厚生労働省令で定める特殊の関係がある者のことです。
理事の場合
3人以内,あるいは総数の3分の1以内
評議員・監事の場合
親族等特殊関係者は含まれてはならない。
こんな細かい規定を知らずとも,社会福祉法人という公益法人の性格を考えると消去できます。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
監事の職務は,監査することです。
その場合,理事及び当該社会福祉法人の職員に対して事業の報告を求めること,当該社会福祉法人の業務及び財産の状況の調査をすることができます。
こういったことから,監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることはできません。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。
社会福祉法人は,その事業を行うに当たり,その評議員,理事,監事,職員その他の政令で定める社会福祉法人の関係者に対し特別の利益を与えてはなりません。(社会福祉法第27条)