2023年8月27日日曜日

こども家庭庁とこども基本法について

2023(令和5)年4月,内閣府の外局として開庁したこども家庭庁は,こどもに関する施策の司令塔となります。

 

現在,所掌する法律は,こども家庭庁の設置に関連する法律を除けば,こども基本法のみです。

 

こども基本法の目的

この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。

 

いかにもいかにも,こどもに関する理念法という感じです。

 

子ども・子育て支援法の目的と比べてみると,一目瞭然です

 

子ども・子育て支援法の目的

この法律は、我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に鑑み、児童福祉法その他の子どもに関する法律による施策と相まって、子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行い、もって一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。

 

こども基本法の目的のポイント

こども施策を総合的に推進することを目的とすること。

 

子ども・子育て支援法の目的のポイント

子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行うこと。

 

こども基本法に規定される「こども政策推進会議」は,こども家庭庁設置されます。

内閣府ではないところに注意が必要です。 


しかし,同会議の会長は,こども家庭庁長官ではなく,内閣総理大臣です。

こども施策を総合的に推進することを目的とするこども基本法は,強力なリーダーシップが必要です。そのために,会長は,内閣総理大臣となります。

 

ついでに基本理論も確認します。

 

 

こども基本法の基本理念

こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

一 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。

二 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

三 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

五 こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。

六 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

 

目的は法の特徴が出ていますが,基本理念には,それほどの特徴が出ていないので,出題するのは難しいかもしれません。

 

児童福祉法の総則

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。

③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。

 

こども基本法とそっくりです。

 

〈こども基本法〉

全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。

 

〈児童福祉法〉

全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

 

〈こども基本法〉

全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。

 

〈児童福祉法〉

国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

 

明確な相違ポイント

 

児童福祉法の基本理念が,こども基本法に似ている理由は,児童福祉法が目指すところは,児童の福祉に関して,高い次元を目指したものであるからです。

 

明確な相違ポイントは,児童福祉法には「児童の権利に関する条約」が明記されていることです。

それを反映したのは「最善の利益」です。

児童の最善の利益は,1924年「ジュネーブ宣言」,1959年「児童の権利宣言」で明記されていたもので,それを法的拘束力のあるものとして,児童に関する権利条約で改めて規定したものです。

最善の利益は,同条約では,8か所にわたって規定されています。

 

子ども・子育て支援法の基本理念

第二条 子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して行われなければならない。

2 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものであり、かつ、子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない。

3 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援は、地域の実情に応じて、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

 

ほかの法律よりも具体的になっています。

 

前回紹介した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」もみてみましょう。

前回の記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/08/blog-post_26.html


子どもの貧困対策の推進に関する法律 

第二条 子どもの貧困対策は、社会のあらゆる分野において、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、子どもが心身ともに健やかに育成されることを旨として、推進されなければならない。

2 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。

3 子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、推進されなければならない。

4 子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 

「子ども貧困対策は~」と書かれています。

より具体的になっています。

 

※今日の問題は,お休みします。

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