グループワーカーのスキルが低いとプログラム活動が予定通りに進まないと焦ってしまい,どうしたらよいのだろうとうろたえてしまいますが,そんな時こそがグループワーカーの腕の見せ所です。
グループワーク(集団援助技術)は,集団を活用して,メンバーが抱える問題の解決を図るために行います。集団を活用できないなら,グループワークを行う意味がありません。
まずは,前回の復習です。
https://fukufuku21.blogspot.com/2023/08/blog-post_13.html
それでは,今日の問題です。
第24回・問題108
事例を読んで,就労継続支援事業所のN生活支援員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
N生活支援員は,18歳から20歳代前半の知的障害のある利用者6人(いずれも男性)によるグループを新たに形成して,メンバーの自己表現力や生活意欲の向上を目的とするグループワークを実施してきた。彼らは,この事業所に通所するようになって,まだ日が浅いメンバーたちであった。また,共通して自己表現力が乏しい上に,親や援助者への依存的な傾向が強く,生活意欲も低い傾向がみられた。N生活支援員は,週に1度の余暇活動の時間を利用してグループ活動を行うことにして,1時間程度のメンバーによる話合いを中心としたプログラムを実施してきた。
1 メンバーの依存的な傾向を考え,自主的な話し合いがなされるまで待ち続けた。
2 最も資質のあると思われる一人のメンバーを,グループのリーダーに指名した。
3 遅刻者や発言しないメンバーがいたので,そういう態度ではグループ活動に参加させられないことを伝えた。
4 メンバー間の言い争いが生じた場面で,メンバー同士がお互いに話し合って解決していくことを促した。
5 仲の良い3人のメンバーからなる下位グループが形成されたので,3人に対してお互いに距離を置くように指示した。
今は,事例問題を解いているだけなので,答えはすぐわかるかもしれません。
しかし,国家試験当日に同じ思考ができないのが,国家試験です。
この出題のあと,現在まで何度も繰り返して出題されてきたのは,サブグループ(下位グループ)ができたときの対応です。
5 仲の良い3人のメンバーからなる下位グループが形成されたので,3人に対してお互いに距離を置くように指示した。
サブグループがグルーブ活動に悪影響を及ぼすような場合は,グループワーカーの介入が必要です。
しかし,そうでないなら,グルーフワーカーは見守ることが大切です。
この問題の正解は,選択肢4です。
4 メンバー間の言い争いが生じた場面で,メンバー同士がお互いに話し合って解決していくことを促した。
グループ内の葛藤(言い争い)があると,グループワーカーはうろたえてしまうかもしれません。
どうしたらよいのだろうと思うかもしれません。しかし,葛藤は変化が生じるきっかけとなります。お互いを理解すること,自分の考え方の傾向などを感じながら,変化していきます。
この状況にグループワーカーがうろたえて,メンバーを切り離すなどの対応は不適切です。
迷うのは,選択肢2かもしれません。
2 最も資質のあると思われる一人のメンバーを,グループのリーダーに指名した。
しかし,グループのリーダーは,グループワーカーが指名するものではありません。
グループ活動の間で,リーダーは自然と発生することもありますし,メンバーが持ち回りでリーダーの役割を担うなど,自分たちの話し合いで決めることが必要です。
そのほかの選択肢です。
1 メンバーの依存的な傾向を考え,自主的な話し合いがなされるまで待ち続けた。
グループワークの開始期では,ワーカーによる促しが必要です。
3 遅刻者や発言しないメンバーがいたので,そういう態度ではグループ活動に参加させられないことを伝えた。
遅刻することや発言しないというのは,メンバーが何かしらのメッセージを送っていることに気がつくことが必要です。
グループワーカーには,そのメンバーの話を傾聴する態度が求められます。