2023年8月26日土曜日

子どもの貧困対策の推進に関する法律

今回は,子どもの貧困対策の推進に関する法律です。

 

近年は,法の理念や目的が出題されるようによってきているので,まずは押さえましょう。

しかし,覚えなくても,国家試験では解けるはずです。

国家試験とはそういうものです。

 

(基本理念)

第二条 子どもの貧困対策は、社会のあらゆる分野において、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、子どもが心身ともに健やかに育成されることを旨として、推進されなければならない。

2 子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。

3 子どもの貧困対策は、子どもの貧困の背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、推進されなければならない。

4 子どもの貧困対策は、国及び地方公共団体の関係機関相互の密接な連携の下に、関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

 

法自体は,14条で構成されています。

 

これで勘の良い人は想像できるかもしれませんが,子どもの貧困対策の推進に関する法律は,子どもの貧困対策のための理念法です。

 

具体的な内容は,個別法で定めます。

 

不思議な感じがしますが,この法律では,政府に対して「子どもの貧困対策に関する大綱」を定めることを義務づけていますが,政府が実際に策定したのは「子供の貧困対策に関する大綱」です。

 

法では「子ども」,実際に策定したのは「子供」。統一してほしいものです。

子供の貧困対策に関する大綱

https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/pdf/r01-taikou.pdf

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題141

子どもの貧困対策の推進に関する法律に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

答えはすぐわかると思いますが,解説します。

 

1 基本理念として,子どもの貧困対策が児童虐待の予防に資するものとなるよう,明記している。

 

貧困は,児童虐待のリスクになりますが,児童虐待の予防については述べられていません。

ほかの法律も見てみるとわかりますが,基本理念は,もっと大きな視点で述べられる傾向にあります。

 

2 子どもの貧困対策では,子どもの年齢及び発達の程度に応じて,その意見が尊重され,その最善の利益が優先して考慮されなければならない。

 

これが正解です。

 

基本理念を知らなくても,選べそうだと思いませんか?

選択肢1と比べてみると,基本理念としてはこちらの方が妥当な感じがするからです。

選択肢1だけに集中していると選択肢1も正解に見えてくると思いますが,必ずほかの選択肢と比べることが必要です。

 

3 政府は2年ごとに,子どもの貧困の状況と貧困対策の実施状況を公表しなければならない。

 

2年ごとというのは,何とも中途半端です。正しくは2年ではなく,毎年です。

 

4 社会福祉協議会は,貧困の状況にある子どもの保護者に対する就労支援に関して必要な対策を講じなければならない。

 

社会福祉協議会は,社会福祉法が定めていますが,民間組織です。

 

その民間組織である社会福祉協議会に対策を講じることを丸投げするのはあまりに無責任です。戦前の社会事業法の時代ならいざ知らず,こういった規定は考えられません。

 

正しくは,社会福祉協議会ではなく,国及び地方公共団体です。

 

これなら納得できます。

 

5 文部科学省に,特別の機関として,子どもの貧困対策会議を置く。

 

子どもの貧困対策会議は,内閣府に置かれています。

 

子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援生活の安定に資するための支援職業生活の安定と向上に資するための就労の支援経済的支援等の施策を、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として、子ども等の生活及び取り巻く環境の状況に応じて包括的かつ早期に講ずることにより、推進されなければならない。


基本理念の中にも4つの支援が明記されています。文部科学省,厚生労働省,経済産業省などが関連するでしょう。

子どもの貧困対策会議は内閣府に置かれることで,省庁をまたいだ施策が実現できます。内閣総理大臣が司令塔となり,関係閣僚に指示を出すことができるからです。


〈今日の一言〉

子どもの貧困対策の推進に関する法律を知らなくても,文部科学省に子どもの貧困対策会議が置かれるのは,あまりに不自然だと感じるはずです。

国家試験当日は,このような違和感を大切にすることがとても重要です。

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