コンティンジェンシー理論とは,組織形態,あるいはリーダーシップスタイルは最善唯一のものは存在せず,状況に合わせて変化させる組織理論,あるいはリーダーシップ理論をいいます。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題120
組織運営の特質と理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 科学的管理法とは,人間関係に着目し,それを科学的に解明しようとしたものである。
2 ホーソン実験では,物理的作業条件よりも人間関係の側面が生産性に影響を与えることが明らかにされた。
3 マトリックス型組織では,「命令統一性の原則」を貫くことが容易である。
4 コンティンジェンシー理論の特徴は,環境が変動したとしても唯一最善の不変的な組織タイプがあることを明らかにした点にある。
5 官僚制理論の特徴として,階層がないフラットな構造を有する点が挙げられる。
組織経営に興味のない人,なじみがない人にとっては,かなり難しく感じることでしょう。
ソーシャルワークに組織経営は関係ないと思う人もいるかもしれません。
しかし,ソーシャルワークにはさまざまな側面があり,組織運営機能,教育的機能などもソーシャルワークに含まれます。
提供するサービスの質の管理は,クライエントの権利擁護につながるためです。
それでは解説です。
1 科学的管理法とは,人間関係に着目し,それを科学的に解明しようとしたものである。
科学的管理法は,組織管理の古典中の古典です。
生産能力によって賃金を決定する管理手法です。標準作業量を定めて,それを上回る労働者の賃金を上げて,それを下回る労働者の賃金は低く抑える管理法です。
2 ホーソン実験では,物理的作業条件よりも人間関係の側面が生産性に影響を与えることが明らかにされた。
これが正解です。
ホーソン実験は,科学的管理法の妥当性を検証するために実施されたものです。
しかし,この実験で得られた結果は,当初の意図とは異なるものでした。
賃金や環境などを変化させても生産能率が上がったのは最初だけで,生産性に大きな影響を与えていたのは,職場のインフォーマルな人間関係であることがわかりました。
もちろん,労働者にとって賃金が良いことに越したことはありません。
しかし,それだけではモチベーションをキープすることは難しく,この実験以降は,組織管理に人間関係論が取り入れられていきました。
ホーソン実験は,このように,とても重要な意味合いがあります。国家試験で取り上げられることが多い理由がわかりますね?
3 マトリックス型組織では,「命令統一性の原則」を貫くことが容易である。
マトリックス型組織とは,指揮命令が明確な縦型組織(たとえば部門別など)に機動力を高める横型組織(たとえばプロジェクトチームなど)を組み合わせた組織形態です。
「命令統一性の原則」を貫くことが容易なのは,トップダウン型組織(縦型組織)だと言えます。
4 コンティンジェンシー理論の特徴は,環境が変動したとしても唯一最善の不変的な組織タイプがあることを明らかにした点にある。
ようやく今日のテーマが登場してきました。
コンティンジェンシー理論は,唯一最善の不変的な組織タイプは存在せず,環境の変化に合わせて変化させていくという理論です。
5 官僚制理論の特徴として,階層がないフラットな構造を有する点が挙げられる。
官僚制の特徴には,文書主義などがあります。そのほかには,階層が明確な組織であることも含まれます。