前回に引き続き,解決志向アプローチを取り上げます。
解決志向アプローチは,短期療法(ブリーフセラピー)を基盤とするもので,問題自体の解決を目指すのではなく,例外探し,コーピングクエスチョン,ミラクルクエスチョンなどを用いて,クライエントのリソース(能力,強さ,可能性等)を引き出すように援助していくものです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題105
事例を読んで,解決志向アプローチに基づくP相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
P相談員は総合病院の医療相談室で働いている。Qさん(40歳代,男性)は難病で入院3か月目を迎えても退院のめどが立たず,うつ状態にある。P相談員がQさんと5日目の面接に臨んだところ,Qさんは「夜は,なかなか眠れません。このまま職を失って,家族を路頭に迷わせるのではないかと考えたり,職場のみんなにも負担をかけるばかりで…。いっそ死んでしまったほうが楽になるのかもしれません。そのほうが誰にも迷惑をかけないような気がして」と消え入りそうな声で言葉をつないだ。
1 問題があまりにも深刻なため,安易にコメントをせずにうなずきを繰り返した。
2 Qさんの気持ちが言葉に込められているので,その一つ一つを丁寧に復唱することにとどめた。
3 Qさんの気持ちが少しでも前向きになるよう,「もうすぐよくなるから大丈夫ですよ」と明るく声かけをした。
4 死にたくなるつらさを受け止め,「Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか」と問いかけた。
5 「家族を支えられるのはQさんだけなので,何とか頑張りましょう」と励ました。
この問題は,解決志向アプローチを知らなくても,正解できるかもしれません。
正解は,選択肢4です。
4 死にたくなるつらさを受け止め,「Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか」と問いかけた。
「Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか」という質問は,Qさんが問題をどのように乗り越えてきたのかに気づきを与えるコーピングクエスチョンです。
クライエントのパーソナリティの変容を目指す心理社会的アプローチのようなアプローチは,時間がかかります。
しかし,解決志向アプローチは,短期療法(ブリーフセラピー)を基盤としているため,ちょっとした面接場面でも活用できます。