公共財とは,道路や公園など,多くの人が利用可能なもののことです。
公共財の特徴
〈非競合性〉
非競合性とは,誰かかが利用していても他の人も利用できることをいいます。
〈非排除性〉
非排除性とは,特定の人に提供しても,他の人も利用できることをいいます。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題30 福祉政策と市場とのかかわりに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉政策における公共財の供給とは,経済社会における「家計の失敗」を原因として概念化されたものであり,あらゆる供給セクターを通じて行われる福祉サービス供給の総称である。
2 公共財は,競合性と排除性によって特徴づけられるので,必要な人があまねく消費するためには各人に公平に分配するための福祉政策が必要になる。
3 価値財は教育サービスのように公的に提供されるものもあるが,基本的には個人の価値観に基づいて消費されるので市場における供給が基本であり,公的供給は二次的である。
4 福祉政策は,必要な人が市場を通じて財やサービスを適正な価格で入手できるように,独占禁止などの必要な税制を行い適正な競争環境を整えることを主な目的としている。
5 公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式を総称して疑似市場といい,我が国の介護保険制度における介護サービスの提供にはこの疑似市場の要素が導入されている。
今から比べると文章が長い問題です。
以前は,国家試験の問題の文字数は潤沢に使えたようです。
今はこんなに長くはないですが,それでも最も少なかった第30回に比べると格段に長くなってきているので,問題を早く正確に読むという訓練は欠かせません。
時間切れとなって,最後の科目はマークできずに不合格になってしまうというのは悲しすぎます。
それでは解説です。
1 福祉政策における公共財の供給とは,経済社会における「家計の失敗」を原因として概念化されたものであり,あらゆる供給セクターを通じて行われる福祉サービス供給の総称である。
なんだかよくわからない文章です。
前述のように今はこんなに長い文章では出題されないので,もう少しシンプルに考えることができます。
公共財がたとえわからなくても,「公共」というイメージから「あらゆる供給セクターを通じて行われる福祉サービス供給」は,公共財とは言わないだろうと推測することができます。
2 公共財は,競合性と排除性によって特徴づけられるので,必要な人があまねく消費するためには各人に公平に分配するための福祉政策が必要になる。
公共財の特徴は,前説のように,非競合性と非排除性です。
3 価値財は教育サービスのように公的に提供されるものもあるが,基本的には個人の価値観に基づいて消費されるので市場における供給が基本であり,公的供給は二次的である。
価値財は,義務教育のように,政府が重要だと認めたものを公的に供給するものをいいます。
市場に供給を任せると財の供給が広く行き渡らずデメリットがあると考えられられる際に,公的に供給します。
トピック的なもので価値材の例を挙げると,新型コロナワクチンの接種です。市場に供給を任せると,接種が行き渡らないために公費で実施しています。
4 福祉政策は,必要な人が市場を通じて財やサービスを適正な価格で入手できるように,独占禁止などの必要な税制を行い適正な競争環境を整えることを主な目的としている。
福祉政策の中には,適正な競争環境を整えることもあるかもしれませんが,それは手段であり目的ではありません。
福祉政策の主な目的は,福祉を必要とする人に対して,適切なサービスを提供できるようにすることです。
ただし,福祉とは社会福祉のことだけではなく,もっと広い概念です。
5 公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式を総称して疑似市場といい,我が国の介護保険制度における介護サービスの提供にはこの疑似市場の要素が導入されている。
これが正解です。
疑似市場(準市場)とは,公的サービスの提供において部分的に市場メカニズムを取り入れた方式の総称です。
疑似市場の例には,出題された介護サービスのほかに医療サービスなどもあります。
市場への参入は自由ですが,提供されるサービスの価格は,介護報酬,診療報酬という公定価格となっています。
この部分が疑似市場です。
介護サービスの利用は,介護保険以前は自治体に相談して行政処分として利用するサービスを決定するという措置制度でした。
介護保険制度は,利用者は事業者と直接契約して利用します。そのため,利用者が事業者を選択するための情報が必要となります。
その辺りのことは,次回に詳しく取り組みたいと思います。