バウチャーとは,金券といった意味ですが,政策手法としてのバウチャーは,使い道を決めて給付する補助金をいいます。
金銭給付は何に使うかは給付を受けた者が自由に決めることができるのに対し,バウチャーは,利用券といったような形で給付されるので,目的以外には利用することができません。
施設等に補助金を出すのではなく,バウチャーの形にすれば,ほど良い競争が生じます。
何に使うかは決まっていますが,どこで使うかは個人の自由だからです。
それでは今日の問題です。
第24回・問題28 福祉政策の手法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 準市場(擬似市場)では,営利事業者の参入が認められず,非営利の事業者が価格に関する規制を受けずに相互に自由に競争する。
2 特定補助金は,自治体の福祉行政の独自の展開を促進する有効な手段であることから,我が国では,福祉行政の地方分権化の推進のために,一貫して特定補助金の拡大が図られてきた。
3 バウチャーの支給という方式の長所は,現物給付方式の場合よりも,受給者に対して物品や事業者の選択を広く認めることができる一方で,現金給付方式のように支給されたお金が他の目的のために使われてしまうということが起きない点にある。
4 ニューパブリックマネジメント(NPM)の考え方では,新自由主義的な改革の行き過ぎの反省に基づき,民営化した施設の再公営化や,効率性より公平性を重視した行政運営を推進すべきものとされる。
5 社会福祉の計画化の一環として老人福祉法では,市町村は在宅福祉サービス整備計画を,都道府県は施設福祉サービス整備計画を算定するものとされ,市町村と都道府県の分担関係が明らかにされている。
難易度が高い問題ですが,今なら正解できるでしょう。正解はバウチャーである選択肢3です。
3 バウチャーの支給という方式の長所は,現物給付方式の場合よりも,受給者に対して物品や事業者の選択を広く認めることができる一方で,現金給付方式のように支給されたお金が他の目的のために使われてしまうということが起きない点にある。
バウチャーの特徴を端的に示している文章です。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 準市場(擬似市場)では,営利事業者の参入が認められず,非営利の事業者が価格に関する規制を受けずに相互に自由に競争する。
準市場(疑似市場・擬似市場)が出題されたら,わが国の介護保険を思い起こします。
営利企業の参入が認められ,価格は介護報酬という公定価格です。
2 特定補助金は,自治体の福祉行政の独自の展開を促進する有効な手段であることから,我が国では,福祉行政の地方分権化の推進のために,一貫して特定補助金の拡大が図られてきた。
特定補助金とは,国が使い道を決めて,地方公共団体に交付するものです。
地方分権化の中で縮小されてきています。
4 ニューパブリックマネジメント(NPM)の考え方では,新自由主義的な改革の行き過ぎの反省に基づき,民営化した施設の再公営化や,効率性より公平性を重視した行政運営を推進すべきものとされる。
ニューパブリックマネジメント(NPM)は,新自由主義的な改革の中で生まれてきたもので,行政に民間の経営手法を取り入れたものです。
5 社会福祉の計画化の一環として老人福祉法では,市町村は在宅福祉サービス整備計画を,都道府県は施設福祉サービス整備計画を算定するものとされ,市町村と都道府県の分担関係が明らかにされている。
このような分担はありません。