社会福祉士の国家試験では,最後の科目となるのは,「更生保護制度」です。
覚える法制度は,基本的に,更生保護法と医療観察法の2つです。
そのため,覚える内容も他の科目よりも当然少ないです。
しかし,残念なことに,学ぶ内容になじみがないため,尻込みしてしまう人が多いようです。
尻込みさえしなければ,確実に得点を稼ぐ科目になるでしょう。
今回から,精神保健福祉士の国家試験に出題された問題を確認していきたいと思っています。
社会福祉士とはちょっと違った角度から確認することができるでしょう。
さて,医療観察法の精神保健観察と更生保護法(及び売春防止法)の保護観察は,いずれも全国の保護観察所が行っています。
整理すると以下のようになります。
|
根拠法
|
実施機関
|
専門職
|
精神保健観察
|
医療観察法
|
保護観察所
|
社会復帰専門官
|
保護観察
|
更生保護法
(1~4号観察)
売春防止法
(5号観察)
|
保護観察所
|
保護観察官
保護司
|
それでは今日の問題です。
精神保健福祉士・第15回・問題67 保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会復帰調整官で十分でないところを補うことを使命としている。
2 厚生労働大臣が都道府県知事の推薦を受けて委嘱する。
3 就労し安定した収入を得ていなければならないとしている。
4 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けることが使命の1つである。
5 性犯罪者処遇プログラムを担っている。
この問題で,気をつけなければならないのは,選択肢1です。
1 社会復帰調整官で十分でないところを補うことを使命としている。
社会復帰調整官も保護観察所に配置され,医療観察法に基づき,「生活環境の調査」「生活環境の調整」「精神保健観察」「連携」を行っています。
保護司は,更生保護法を根拠として活動しています。
保護観察官の十分でないところを補うことが使命の一つです。
社会福祉士の国試でも,更生保護法と医療観察法を混同させるように出題されているものがあるので,十二分に気を付けたいところです。
それでは,ほかの選択肢も確認していきましょう。
2 厚生労働大臣が都道府県知事の推薦を受けて委嘱する。
更生保護法は,法務省が所掌しています。
保護司は,保護観察所の長から推薦を受けて,法務大臣が委嘱します。
更生保護法には,都道府県の役割はありません。
市町村は,唯一,保護観察対象者に関して,「応急の救護」(保護観察に付されていないものに対して実施される更生緊急保護と内容は同じ)に要した費用の徴収を行うことが規定されているのみです。
ちなみに,市町村が実施する「応急の救護にかかった費用の徴収」は,第一号法定受託事務です。
3 就労し安定した収入を得ていなければならないとしている。
保護司法では,以下のように規定されています。
(推薦及び委嘱)
第三条 保護司は、左の各号に掲げるすべての条件を具備する者のうちから、法務大臣が、委嘱する。
一 人格及び行動について、社会的信望を有すること。
二 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
三 生活が安定していること。
四 健康で活動力を有すること。
|
生活が安定していることは,委嘱要件にありますが,安定した収入がなけれぱならないといった規定はありません。
4 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けることが使命の1つである。
これが正解です。
保護司の職務
(職務の遂行)
第八条の二 保護司は、地方更生保護委員会又は保護観察所の長から指定を受けて当該地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌に属する事務に従事するほか、保護観察所の長の承認を得た保護司会の計画の定めるところに従い、次に掲げる事務であつて当該保護観察所の所掌に属するものに従事するものとする。
一 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための啓発及び宣伝の活動
二 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための民間団体の活動への協力
三 犯罪の予防に寄与する地方公共団体の施策への協力
四 その他犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図ることに資する活動で法務省令で定めるもの
|
5 性犯罪者処遇プログラムを担っている。
性犯罪者処遇プログラムは,特別遵守事項として実施されています。
このプログラムは,認知行動療法に基づく専門的なものなので,研修を受けた保護観察官が担っています。
もちろん,保護司も補導援護として相談を受けることもあるかもしれませんが,プログラムそのものを担っているものではありません。
<今日の一言>
更生保護制度は,多くの人にとって,なじみのない科目かもしれません。
そこを突いて,国試では,うっかりミスを誘うような出題をします。
今日の問題では,選択肢1がいかにもそのようなタイプです。
更生保護法と医療観察法を混同しないように気をつけましょう。