今回は,少年司法における家庭裁判所の役割を取り上げます。
今までも何度も取り上げているので復習になります。
家庭裁判所が非行少年(犯罪少年,触法少年,虞犯少年)に対して,保護処分の審判をする過程には,2つのルートがあります。
犯罪少年
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検察からの送致
※罰金刑以下の場合は,警察から直接送致
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触法少年
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児童相談所からの送致
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虞犯少年
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家庭裁判所は,保護処分,児童相談所への送致,検察への逆送致を行います。
ただし,検察への逆送致を行うのは,犯罪少年のみです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題150 少年保護審判を担当する家庭裁判所と他の機関との連携に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 家庭裁判所は,犯罪少年については,警察官から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
2 家庭裁判所は,触法少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
3 家庭裁判所は,審判を開始する前に,少年鑑別所に命じて,審判に付すべき少年の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
4 家庭裁判所は,犯行時14歳以上の少年が犯した犯罪については原則的に検察官に送致しなければならない。
5 家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,保護観察官の観察に付することができる。
この問題も,前回と同じように,非行少年の知識が必要です。
非行少年
犯罪少年
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刑事罰を受ける可能性がある。
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触法少年
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刑事罰を受けることはない。
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虞犯少年
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刑事罰を受ける可能性があるという意味は,検察が起訴する可能性があることを指しています。
触法少年と虞犯少年は,刑事罰を受けることがないので,検察に逆送致されることがありません。
検察に逆送致されることがあるのは,犯罪少年のみです。
それでは,この視点で問題を解説していきます。
1 家庭裁判所は,犯罪少年については,警察官から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
犯罪少年は,罰金刑以下の場合は,警察から直接送致されますが,それ以外の犯罪の場合は,警察は,検察に送致し,検察は家庭裁判所に送致します。
つまり,ルートは,警察からの送致と検察からの送致の2ルートあることになります。
2 家庭裁判所は,触法少年については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた場合に限り審判に付することができる。
これが正解です。
触法少年と虞犯少年は,児童福祉法の措置が優先されます。
そのうえで,都道府県知事あるいは児童相談所長が保護処分が適切だと判断した場合,家庭裁判所に送致されます。
3 家庭裁判所は,審判を開始する前に,少年鑑別所に命じて,審判に付すべき少年の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
少年鑑別所が行うのは,心身の鑑別です。これは取り調べではありません。
(鑑別の実施)
第十六条 鑑別対象者の鑑別においては、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示すものとする。
2 鑑別対象者の鑑別を行うに当たっては、その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況(鑑別対象者が在所者である場合に限る。)その他の鑑別を行うために必要な事項に関する調査を行うものとする。
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この鑑別の結果をもとに,家庭裁判所が審判を行います。
4 家庭裁判所は,犯行時14歳以上の少年が犯した犯罪については原則的に検察官に送致しなければならない。
家庭裁判所が犯罪少年を検察に送致する「逆送致」を行うのは,少年が刑事罰を受けることが適切だと判断した場合に限られます。
家庭裁判所の審判
保護処分
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児童相談所への送致
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検察への送致(犯罪少年の場合のみ)
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5 家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,保護観察官の観察に付することができる。
保護処分のために必要な場合は,家庭裁判所調査官による観察に付す「試験観察」と呼ばれる方法を取ります。
<今日の一言>
触法少年と虞犯少年は,児童福祉法が優先
触法少年又は虞犯少年を補導(あるいは発見)した場合,児童福祉法が優先されるので,児童相談所に送致(あるいは通告)します。
都道府県知事又は児童相談所長が保護処分が必要だと判断した場合,家庭裁判所に送致することとなります。
犯罪少年の場合は,警察かに検察に送致されて,家庭裁判所に送致されます。
非行少年は,3類型がありますが,覚えるのは,2つで良いです。
つまり「犯罪少年」と「触法少年・虞犯少年」です。
犯罪少年は,すべて家庭裁判所に送致されるのに対し,「触法少年・虞犯少年」は,都道府県知事又は児童相談所長が保護処分が必要だと判断した場合のみ,家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所に送致された後にも違いがあります。
犯罪少年は,検察に送致(逆送致)されることがありますが,「触法少年・虞犯少年」は,逆送致されることはありません。
この違いは,犯罪少年の場合は,刑事罰を受ける可能性があるのに対し,「触法少年・虞犯少年」は,刑事罰を受けることがないことに起因します。