社会復帰調整官の任用資格は,医療観察法施行令によって以下のように規定されています。
(社会復帰調整官の資格)
第五条 法第二十条第三項の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者として政令で定めるものは、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 精神保健福祉士
二 次のイからニまでに掲げる者であって、精神障害者に関する当該イからニまでに定める業務に従事した経験を有するもの
イ 保健師 保健師助産師看護師法第二条に規定する業務
ロ 看護師 保健師助産師看護師法第五条に規定する業務
ハ 作業療法士 理学療法士及び作業療法士法第二条第四項に規定する業務
ニ 社会福祉士 社会福祉士及び介護福祉士法第二条第一項に規定する業務
三 法務大臣が前二号に掲げる者と同等以上の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有すると認める者
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実務経験のある社会福祉士も任用資格に含まれます。
社会福祉士及び介護福祉士法第二条第一項とは,
(定義)
第二条 この法律において「社会福祉士」とは、第二十八条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。
つまり,社会福祉士としての実務がある者は,社会復帰調整官として任用されます。
ただし,精神保健福祉士は実務経験を要しないのに対して,社会福祉士は実務経験が必要なところが要注意です。
なお,社会福祉士の場合は,以下の任用に関しては実務経験を要しません。
児童福祉司
身体障害者福祉司
知的障害者福祉司
それでは,今日の問題です。
第27回・問題149 Aさんは,社会福祉士の資格を活かして,保護観察所に社会復帰調整官として採用された。社会復帰調整官としてかかわることになった「医療観察法」上の業務に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 社会復帰調整官は,「医療観察法」上の審判の際に行う生活環境の調査を,地域社会の実情に詳しい保護司に行わせる。
2 社会復帰調整官が指定入院医療機関に出向き,対象者の退院後の生活環境の調整を行う。
3 指定入院医療機関退院後の居住予定地にある精神保健福祉センターが開催するケア会議に,社会復帰調整官として出席する。
4 対象者が,「医療観察法」に基づく指定通院医療機関に通院中は,「精神保健福祉法」による入院はできない。
5 精神保健観察の「守るべき事項」に違反すると,保護観察所の長の決定により,再入院の措置がとられる。
Aさんは,社会福祉士です。つまり新卒ではないことを意味しています。
これは答えには関係するものではありません。
今まで何度も社会復帰調整官の職務は確認してきましたが,ここで今一度確認します。
社会復帰調整官の職務
生活環境の調査
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裁判所からの求めに対して,対象者の生活環境全般の調査を行う。
裁判所は,調査結果も参考にして,審判を行う。
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生活環境の調整
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対象者の退院後の生活環境の整備を行う。
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精神保健観察
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対象者が通院による医療を受ける際に実施する。
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連携
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関係機関相互間の連携の確保。
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つまり正解は,選択肢2です。
2 社会復帰調整官が指定入院医療機関に出向き,対象者の退院後の生活環境の調整を行う。
社会復帰調整官の4つの職務を理解しておけば,ほかの選択肢に引っ掛かることなく,正解できるはずです。
それでは,ほかの選択肢も確認してみましょう。
1 社会復帰調整官は,「医療観察法」上の審判の際に行う生活環境の調査を,地域社会の実情に詳しい保護司に行わせる。
生活環境の調査は,社会復帰調整官の職務です。
保護司は,地域に詳しいですが,更生保護法にはかかわりますが,医療観察法にはかかわりません。
法律というのは,こういうものです。
3 指定入院医療機関退院後の居住予定地にある精神保健福祉センターが開催するケア会議に,社会復帰調整官として出席する。
ケア会議は,連携の場として重要です。
開催するのは,保護観察所です。
精神保健福祉センターは,精神保健福祉法に規定される機関です。ケア会議の開催がわからなくても,「他方が根拠法になっているものが開催するのは変だ」と思うことが大切です。
そうしないと間違えます。
4 対象者が,「医療観察法」に基づく指定通院医療機関に通院中は,「精神保健福祉法」による入院はできない。
医療観察法による通院中であっても,精神保健福祉法による入院は行われます。
具体的に言えば,自傷他害のおそれがある場合に実施される措置入院です。
通院中に,また犯罪を犯すようなことがあっては大変なことになるからです。
そのために,社会復帰調整官は,病状の悪化の際に適宜かかわっていくことになります。
精神保健福祉士が社会復帰調整官に任用される際,実務経験を要しないのは,精神保健福祉法を深く学んでいるためだと考えられます。
5 精神保健観察の「守るべき事項」に違反すると,保護観察所の長の決定により,再入院の措置がとられる。
再入院の措置を決定するのは,地方裁判所です。
<今日の一言>
推測力が重要です。
この問題でわかるように,正解として選択肢2を選べない場合,推測力を発揮しないと,ほかの選択肢で引っ掛けられます。
この場合,重要なことは,根拠法です。
国試会場では,こういったことを瞬時に判断しなければなりません。
それには訓練が必要です。
ぜひ,この学習部屋を活用して,推測力を身につけていってください。