2020年5月10日日曜日

医療観察制度の概要~その2



医療観察制度は,心神喪失あるいは心神耗弱の状態で,重大な他害行為を行った者に対して,適切な医療を提供することで,再発防止と社会復帰の促進を行うことを目的としています。

それでは,早速今日の問題です。

26回・問題149 「医療観察法」が定める医療観察制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「医療観察法」が制定されたことにより,「精神保健福祉法」が定めていた措置入院の制度は廃止された。

2 「医療観察法」が規定する審判は,地方裁判所において裁判官と裁判員との合議体により行われる。

3 裁判所により入院命令が言い渡された場合,その対象者に対して医療を実施する指定入院医療機関は,法務大臣が指定した病院である。

4 精神保健観察の実施機関は,法務省が所管する保護観察所であり,保護観察所に配属される社会復帰調整官がその事務に従事する。

5 入院によらない医療を受けさせるいわゆる通院決定がなされた場合,その通院医療の期間には制限がない。



更生保護制度は,4問しかない科目なので,本当に基本中の基本を柱にして出題されます。

そのため,落ち着いて取り組むと正解できる問題が多い傾向にあります。

しかし,この科目は,国家試験の最後を締めくくるものなので,疲れ切っていることと早く試験を終わりたいという焦りから,冷静な判断を行うことが難しい科目であると言えます。

それでは,解説です。


1 「医療観察法」が制定されたことにより,「精神保健福祉法」が定めていた措置入院の制度は廃止された。

精神保健観察法には,4つの入院形態が規定されています。

任意入院
本人の同意によって行う入院。
医療保護入院
自傷他害のおそれがなく,家族等の同意によって行う入院。
措置入院(緊急措置入院)
自傷他害のおそれがある場合,都道府県知事の措置によって行う入院。
応急入院
本人及び家族等の同意ない場合に行われる入院。


医療観察法ができても,精神保健福祉法による措置入院は残っています。



2 「医療観察法」が規定する審判は,地方裁判所において裁判官と裁判員との合議体により行われる。

「医療観察法」が規定する審判は,裁判官と精神保健審判員(医師)との合議体によって行われます。



3 裁判所により入院命令が言い渡された場合,その対象者に対して医療を実施する指定入院医療機関は,法務大臣が指定した病院である。

指定入院医療機関の指定は,厚生労働大臣が行います。

そのため,医療観察法は,法務省と厚生労働省の共管となっています。



4 精神保健観察の実施機関は,法務省が所管する保護観察所であり,保護観察所に配属される社会復帰調整官がその事務に従事する。

これが正解です。

入院によらない医療(通院医療)を受ける間は,精神保健観察に付されます。

精神保健観察を実施するのは,保護観察所に配置されている社会復帰調整官です。



5 入院によらない医療を受けさせるいわゆる通院決定がなされた場合,その通院医療の期間には制限がない。

入院によらない医療(通院医療)の期間は,原則3年です。2年を超えない期間で延長することはできます。



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