2020年5月20日水曜日

更生保護の担い手~自立準備ホーム



今回は,自立準備ホームに着目したいと思います。

自立準備ホーム(法務省のホームページから)

平成23年度から開始された「緊急的住居確保・自立支援対策」は,NPO法人等が管理する施設の空きベッド等を活用するもので,この施設を「自立準備ホーム」と呼び,あらかじめ保護観察所に登録しておき,保護が必要なケースについて,保護観察所から事業者に対して宿泊場所,食事の提供と共に,毎日の生活指導等を委託するものです。

行き場のない刑務所出所者等の帰住先・定住先を確保するため,これまで更生保護施設が中心となり,こういった行き場のない刑務所出所者等について,国の委託を受けて収容保護し,社会生活に適応させるための生活指導等を行ってきました。
 しかし,それでもなお行き場のない刑務所出所者等が多数に上ることから,法務省では更生保護施設の受け入れ機能を強化するとともに,平成23年度から「緊急的住居確保・自立支援対策」による住居の確保の施策を実施しています。

更生保護施設不足を補うために始められた事業であることがわかりますね。

認可制ではなく,登録制になっているところがポイントです。

それでは今日の問題です。


27回・問題150 更生保護における最近の取組に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 仮釈放者を対象に犯罪傾向などの問題性に応じた重点的・専門的処遇を行うために,自立更生促進センターが全都道府県に設置された。

2 高齢又は障害により自立が困難な矯正施設退所者等に対し,退所後直ちに福祉サービスにつなげるなど,地域生活に定着をはかるため,地域生活定着支援センターが設置された。

3 個々の保護司への支援の必要性や,保護司会がより組織的に処過活動や犯罪予防活動を行う観点から,更生保護サポートセンターが設置された。

4 刑の一部の執行猶予制度が新設され,薬物使用等の罪を犯した者に対して,裁量的に猶予期間中保護観察を付すことができることになった。

5 更生保護施設への入所に限界があることから,緊急的住居確保・自立支援対策の一つとして,「自立準備ホーム」が法務大臣の許可の下に設置できることになった。


今なら,参考書などにそれぞれが載っていると思いますが,出題当時は,そこそこ難しかった問題だったと思います。

しかも,問題150なので,最後の最後の問題です。
受験生にとって,後味が悪い試験となったのではないでしょうか。

それでは解説です。


1 仮釈放者を対象に犯罪傾向などの問題性に応じた重点的・専門的処遇を行うために,自立更生促進センターが全都道府県に設置された。

自立更生促進センターは,現在でも全国4か所しかありません。

法務省のホームページから

親族や民間の更生保護施設では円滑な社会復帰のために必要な環境を整えることができない刑務所出所者等を対象として,国が設置した一時的な宿泊場所(保護観察所に併設)を提供するとともに,保護観察官が直接,濃密な指導監督と手厚い就労支援により,これらの者の改善更生を助け,再犯を防止し,安全・安心な国や地域づくりを推進することを目的として,自立更生促進センター等を設置・運営しています。

 このうち,特定の問題性に応じた重点的・専門的な社会内処遇を実施する施設を「自立更生促進センター」,主として農業等の職業訓練を行う施設を「就業支援センター」と呼び,現在,福島市及び北九州市に自立更生促進センターを,北海道沼田町及び茨城県ひたちなか市に就業支援センターを,それぞれ設置し,運営しています。

この選択肢は,解答テクニックで消去することができそうです。

そのポイントは「都道府県」です。

2 高齢又は障害により自立が困難な矯正施設退所者等に対し,退所後直ちに福祉サービスにつなげるなど,地域生活に定着をはかるため,地域生活定着支援センターが設置された。

これは正解です。


地域生活定着支援センター 
刑務所出所後の帰住先のない高齢者や障害者を対象として,福祉サービスにつなげる支援を行う。
支援内容
①コーディネート
保護観察所の依頼に基づいて,福祉ニーズの確認等を行って,受入れ先施設等のあっせん,福祉サービスに係る申請支援等。
(2)フォローアップ
コーディネートした者が矯正施設から退所した後,本人を受け入れた施設等に対する助言等。
(3)相談支援業務
矯正施設から退所した人が福祉サービスにあたって,本人又はその関係者に対する相談,助言その他必要な支援。



3 個々の保護司への支援の必要性や,保護司会がより組織的に処過活動や犯罪予防活動を行う観点から,更生保護サポートセンターが設置された。

これが2つめの正解です。

更生保護サポートセンター(法務省のホームページから)
更生保護サポートセンターとは,保護司・保護司会が,地域の関係機関・団体と連携しながら,地域で更生保護活動を行うための拠点です。その多くは保護司会が市町村や公的機関の施設の一部を借用し,開設しており,そこでは,経験豊富な「企画調整保護司」が常駐して,保護司の処遇活動に対する支援や関係機関との連携による地域ネットワークの構築等を行っています。

 また,保護司を始めとする更生保護ボランティアの会合や更生保護活動に関する情報提供の場としても活用されています。
 平成20年度から整備を開始しており,令和元年度予算で全ての保護区に設置し,全国合計886か所となる予定です。



4 刑の一部の執行猶予制度が新設され,薬物使用等の罪を犯した者に対して,裁量的に猶予期間中保護観察を付すことができることになった。

刑の一部の執行猶予制度は,一般の執行猶予と違って,ある一定の期間を服役して,刑期の残りを執行猶予とするものです。

薬物使用等の罪を犯した者は,執行猶予期間は,必ず保護観察に付されます。



5 更生保護施設への入所に限界があることから,緊急的住居確保・自立支援対策の一つとして,「自立準備ホーム」が法務大臣の許可の下に設置できることになった。

自立準備ホームは,登録制です。

登録先は,保護観察所です。

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