生活保護の扶助は8種類あります。
扶助の種類別扶助人員で最も多いのは,「生活扶助」です。
そういった意味では,生活扶助が,生活保護の中心と言えます。
ただし,最も費用がかかっているのは「医療扶助」です。
費用の半分は,医療扶助が占めています。
区別して,覚えることが必要です。
さて,今回は,生活扶助の内容を押さえていきたいと思います。
生活扶助の体系
第1類費
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食費・被服費等の個人単位の経費(年齢別)
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第2類費
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光熱費・家具什器等の世帯単位の経費及び地区別冬季加算(世帯人員別)
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入院患者日用品費
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病院等に入院している被保護者の一般生活費
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介護施設入所者基本生活費
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介護施設に入所している被保護者の身の回り品等一般生活費
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加算
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妊産婦加算
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栄養補給等,妊産婦の特別なニーズに対応するもの
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母子加算
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一方の配偶者が欠ける状況にある者等が児童を養育しなければならないことに伴う特別なニーズに対応するもの(父子家庭も対象)
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障害者加算
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障害を抱えることによって生じる特別なニーズに対応するもの。
身体障害者福祉法が規定する障害等級1~3級の場合。
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介護施設入所者加算
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介護施設に入所している被保護者の教養娯楽等特別なニーズに対応するもの。
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在宅患者加算
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在宅患者の栄養補給等のための特別なニーズに対応するもの。
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放射線障害者加算
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原爆放射能による負傷,疾病の状態にある者などに係る特別なニーズに対応するもの
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児童養育加算
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中学校修了前の児童の教養文化的経費等の特別ニーズに対応するもの
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介護保険料加算
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介護保険の第一号保険料に対応するもの
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期末一時扶助
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年末における特別ニーズに対応するもの
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一時扶助
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保護開始時,出生,入学,入退院時などに際して,必要不可欠の物資を欠いており,かつ緊急やむを得ない場合に対応するもの(被服費,家具什器費,移送費,入学準備金など)
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なお,生活扶助は,所在地により以下のようにわかれており,給付額に差があります。
一級地
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1
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2
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二級地
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1
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2
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二級地
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1
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2
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それでは今日の問題です。
第29回・問題66 現行の生活保護基準に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
2 生活扶助基準第一類は,男女の性別ごとに設定されている。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
4 生活扶助基準第二類は,世帯人員別に設定されている。
5 生活扶助基準第二類は,生活保護の受給期間に応じて設定されている。
この問題は,第一類と第二類を整理できていることに尽きます。
第一類
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第二類
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個人単位の経費(年齢別)
0~2歳
3~5歳
6~11歳
12~17歳
18~19歳
20~40歳
41~59歳
60~64歳
65~69歳
60~74歳
75歳以上
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世帯単位の経費(世帯人員別)
1人
2人
3人
4人
5人
6人
7人
8人
9人
10人以上
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それでは解説です。
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
生活扶助は,所在地ごとに設定されています。
これを「給地」と呼びます。
2 生活扶助基準第一類は,男女の性別ごとに設定されている。
第一類は,個人単位の経費です。
生活保護法の「必要即応性の原則」には,「保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする」と規定されていますが,実際には,男女の性別は設けられていません。
かつては,男女の体格差によって支給額に差がありましたが,現在は体格差がなくなったということで廃止されています。しかし,法の条文は変えずそのまま残っています。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
第一類は,個人単位の経費(年齢別)です。
4 生活扶助基準第二類は,世帯人員別に設定されている。
これが正解です。
第二類は,世帯単位の経費(世帯人員別)です。
5 生活扶助基準第二類は,生活保護の受給期間に応じて設定されている。
生活扶助に限らず,受給期間にかかわらず,ニーズを考慮して不足分を給付します。
それが「基準及び程度の原則」です。
<今日の一言>
第32回国試は,試験委員の3分の2が入れ替わって問題が作られました。
そのため,問題文の作り方が甘いものも散見されます。
第33回は,問題づくりに少し慣れると思うので,日本語的に解ける問題は減るでしょう。
しかし,問題は人がつくります。
正しい文章を出題するのは簡単ですが,正しくない文章をそれっぽく見せかけてつくるのは,かなり難しいものです。
今日も問題で言えば,
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
と
4 生活扶助基準第二類は,世帯人員別に設定されている。
という文章が混在しています。
すべて「〇〇によらず設定されている」という文章なら,難易度が極めて高いものとなります。
しかし,このようにばらつくとそこがヒントになって問題が解けることがあります。
問題をつくる側に立つとわかるかもしれませんが,元ネタがなければ「所在地域によらず」「年齢によらず」などは思いつかないはずです。
問題は,正解と誤りが混在しないと成り立ちません。
問題のつくり方にはいくつかありますが,正しい文章で構成された5つの選択肢をつくって,そのうち,3つ,あるいは4つを否定形などに変えることによって,問題を完成させる方法があります。
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
のもともとの文章は,
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によって設定されている。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によって設定されている。
だと考えられます。
こういったところに気がつくことができれば,つまらないミスを減らすことができるでしょう。
社会福祉士の国家試験は,得点の上位30%が合格できます。
つまらないミスが少ない人は合格して,つまらないミスが多い人は不合格になります。
誰も解けないような問題が正解できても,みんなが解ける問題が正解できなければ国試合格は難しいと言えます。