今回から,科目は「権利擁護と成年後見制度」に進みます。
現在の科目も難しいですが,旧カリキュラム時代にあった「法学」に比べると対応可能な問題が多くなっているように思います。
しかし,この科目で注意しなければならないのは,午前中の科目の最後なので,時間がなくなったり,疲れ切って頭の回転が鈍くなってしまうことです。
模擬試験を受験しないで国試に臨む人はたくさんいますが,国試に本気で合格する気なら,模擬試験は必ず受験した方が良いです。
模擬試験の難易度比較及び国試との関係(ソ教連・中央法規・社会福祉士会・日総研)
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/10/blog-post_31.html
今回は,虐待防止三法を学びましょう。
虐待の定義 |
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(児童虐待防止法) 保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するもの)による児童虐待 |
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(高齢者虐待防止法) 養護者による高齢者虐待 |
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(障害者虐待防止法) 養護者による障害者虐待 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待 使用者による障害者虐待 |
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虐待の種類 |
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身体的 |
心理的 |
ネグレクト |
性的 |
経済的 |
児童虐待防止法 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
× |
高齢者虐待防止法 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
障害者虐待防止法 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
児童虐待防止法が,保護者による虐待に焦点化されているのは,被措置児童等虐待は,児童福祉法で規定しているからです。
児童福祉法の虐待の種類は,児童虐待防止法と同じです。
つまり経済的虐待が含まれません。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題77 「高齢者虐待防止法」,「児童虐待防止法」及び「障害者虐待防止法」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「高齢者虐待防止法」における「高齢者虐待」の定義には,使用者による高齢者虐待が含まれている。
2 「障害者虐待防止法」における「障害者虐待」の定義は,特別支援学級教職員による障害者虐待が含まれている。
3 「児童虐待防止法」における「児童虐待」の定義には,保育士による児童虐待が含まれている。
4 設問に掲げた三法の虐待の定義には,いずれも,いわゆる経済的虐待が含まれている。
5 設問に掲げた三法の虐待の定義には,いずれも,いわゆるネグレクト(放置・放任等)が含まれている。
(注)1 「高齢者虐待防止法」とは,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
2 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。
3 「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
こ
の手の問題は,しっかり勉強した人は,消去法ではなく,答えがすぐわかるので,気持ちが良いものとなるでしょう。
しかし,多くの問題はこういったタイプのものは少なく,ほかの選択肢を慎重に消去することで,答えを見つけ出すものです。
そのため,正解できたという手ごたえがなく,自己採点するまで辛い時間を過ごすこととなります。
これは,まじめに勉強したすべての受験生が経験することです。
それでは,解説です。
1 「高齢者虐待防止法」における「高齢者虐待」の定義には,使用者による高齢者虐待が含まれている。
高齢者虐待防止法の虐待の定義は,「養護者による高齢者虐待」です。
使用者による虐待防止が含まれるのは,障害者虐待防止法です。
2 「障害者虐待防止法」における「障害者虐待」の定義は,特別支援学級教職員による障害者虐待が含まれている。
障害者虐待防止法の虐待の定義は
・養護者による障害者虐待
・障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
・使用者による障害者虐待
特別支援学級教職員による障害者虐待は含まれません。
3 「児童虐待防止法」における「児童虐待」の定義には,保育士による児童虐待が含まれている。
児童虐待防止法の児童虐待の定義は保護者による児童虐待です。
保育士による児童虐待は,児童福祉法でも規定されていません。
4 設問に掲げた三法の虐待の定義には,いずれも,いわゆる経済的虐待が含まれている。
経済的虐待は,児童虐待防止法には含まれません。
5 設問に掲げた三法の虐待の定義には,いずれも,いわゆるネグレクト(放置・放任等)が含まれている。
これが正解です。
<今日の一言>
答えを考えながら探し出すことで,正解できるというタイプの問題が多い理由は,知識偏重の頭でっかちの社会福祉士を養成しないためだと考えています。
自分で考えることができない社会福祉士は,現場では必要とされません。
その分,過酷な試験だと言えますが,それによって質が担保されていると考えて,試練に耐えていきましょう。