2020年8月8日土曜日

各専門職における医師との関連性


今回は,医療・福祉にかかわる専門職の法規定を確認したいと思います。

 

社会福祉士

社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等(助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者)その他の関係者との連携を保たなければならない。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは、その指導を受けなければならない。

保健師

助産師

看護師

主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

理学療法士

医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者。

作業療法士

医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者

言語聴覚士

診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

言語聴覚士は、その業務を行うに当たって、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者に主治の医師又は歯科医師があるときは、その指導を受けなければならない。

 

主だったものをピックアップしました。

 

医師との関係を整理すると以下のようになります。

 

社会福祉士

連携

精神保健福祉士

指導(業務)

保健師

助産師

看護師

指示(診療の補助)

理学療法士

指示(診療の補助)

作業療法士

指示(診療の補助)

言語聴覚士

指示(診療の補助)

業務(業務)

 

診療の補助として業務を行う場合,「指示」という関連があることがわかりますね。

 

社会福祉士の「連携」という関係とは異なっているのを押さえておきたいです。

社会福祉士の国試には,精神保健福祉士について「出題基準」で示されていますが,実際には出題されたことがありません。

 

精神保健福祉士は,福祉職でありながら,医療関係機関で業務を行うことがあるため,「指導」という関係が規定されているのでしょう。

しかし,医療職の「指示」と異なり,「指導」です。

 

この表に示していませんが,看護師の業務には,もう一つ「療養上の世話」があります。

これは看護師の独自領域なので,医師の「指示」も「指導」も必要とされません。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題73 医療・福祉の専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。

2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。

3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。

4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。

5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。

 

冷静に読めば,難易度はそれほど高くないかもしれません。

 

正解は,選択肢1です。

 

1 理学療法士は,在宅患者への訪問リハビリテーションについても,医師の指示の下に実施しなければならない。

 

診療の補助業務としての理学療法は,医師の指示の下で行われなければなりません。

 

それでは,ほかの選択肢も確認してみましょう。

 

2 社会福祉士は,要介護者に福祉用具に関する助言を提供する場合,医師からの助言の下で実施しなければならない。

 

社会福祉士の業務は,法制度上,指示や助言,指導を受けなければならないものはありません。

 

3 医師は,患者に対し治療上,薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合,薬剤師に処方箋を交付させなければならない。

 

院内薬剤部で処方されていた「院内処方」の時代では,迷うものかもしれません。

 

しかし,今は「院外処方」が主流になっているので「おやっ?」と思えるのではないでしょうか。

 

医師が処方せんを発行するのは,患者又は現にその看護を行っている者です。

 

今の若い人は知らないと思いますが,病院が薬を安く仕入れて,患者には公定価格で提供することで利益を生み出す「薬価差益」が存在していました。

 

院外処方が主流の時代,今となっては薬価差益は昔話ですね。

 

 

4 言語聴覚士は,摂食機能に障害のある者への療法については,歯科衛生士の了承の下で実施しなければならない。

 

言語療法士の場合,指導を受けなければならないのは医師です。

 

5 看護師は,臨時応急の手当てを行う際にも,医師又は歯科医師の指示の下に実施しなければならない。

 

臨時応急の手当とは,

 

命が危険な場合に実施するのが,臨時応急の手当です。

 

看護師が診療の補助業務を行う場合,医師の指示の下で行わなければなりません。

 

しかし,臨時応急の手当は,指示を待っていたら命の危険があるので,医師の指示は必要としません。

 

<今日の一言>

 

現在のカリキュラムで養成される介護福祉士は,福祉専門職でありながら,喀痰吸引等の「特定行為」を医師の「指示」の下で行うことができます。

 

福祉専門職の中で「医師の指示の下」で行う業務の規定があるのは,介護福祉士のみです。

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