この科目は,今のカリキュラムでは,「現代社会と福祉」にあたるものだと言えるでしょう。
しかし,以前のカリキュラムにあった「社会福祉原論」の内容だった「原理」の部分が一部復活し,思想・哲学といったものも含まれています。
本気で取り組まなければ,理解できない深い部分が含まれたと言えるでしょう。
4 社会福祉の原理と政策(60)
ねらい(目標)
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①社会福祉の原理をめぐる思想・哲学と理論を理解する。
②社会福祉の歴史的展開の過程と社会福祉の理論を踏まえ,欧米との比較によって日本の社会福祉の特性を理解する。
③社会問題と社会構造の関係の視点から,現代の社会問題について理解する。
④福祉政策を捉える基本的な視点として,概念や理念を理解するとともに,人々の生活上のニーズと福祉政策の過程を結びつけて理解する。
⑤福祉政策の動向と課題を踏まえた上で,関連施策や包括的支援について理解する。
⑥福祉サービスの供給と利用の過程について理解する。
⑦福祉政策の国際比較の視点から,日本の福祉政策の特性について理解する。
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教育に含むべき事項(内容)
教育に含むべき事項
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想定される教育内容の例
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①社会福祉の原理
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1社会福祉の原理を学ぶ視点
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・社会福祉の歴史,思想・哲学,理論,社会福祉の原理と実践
・社会福祉学の構造と特徴
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②社会福祉の歴史
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1社会福祉の歴史を学ぶ視点
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・歴史観,政策史,実践史,発達史,時代区分
・日本と欧米の社会福祉の比較史の視点
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2日本の社会福祉の歴史的展開
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・慈善事業,博愛事業
・社会事業
・社会福祉事業
・社会福祉
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3欧米の社会福祉の歴史的展開
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・救貧法
・慈善事業,博愛事業
・社会事業,社会保険
・福祉国家,福祉社会
・国際的潮流
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③社会福祉の思想・哲学,理論
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1社会福祉の思想・哲学
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・社会福祉の思想・哲学の考え方
・人間の尊厳
・社会正義
・平和主義 等
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2社会福祉の理論
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・社会福祉の理論の基本的な考え方
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・戦後社会福祉の展開と社会福祉理論
・社会福祉の理論(政策論,技術論,固有論,統合論,運動論,経営論)
・欧米の社会福祉の理論
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3社会福祉の論点
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・公私関係,効率性と公平性,普遍主義と選別主義,自立と依存,自己選択・自己決定とパターナリズム,参加とエンパワメント,ジェンダー,社会的承認
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4社会福祉の対象とニーズ
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・ニーズと需要の概念
・社会福祉の対象とニーズ
・ニーズの種類と次元
・ニーズの理論とその課題
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④社会問題と社会構造
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1現代における社会問題
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・貧困,孤立,失業,要援護性,偏見と差別,社会的排除,ヴァルネラビリティ,ニューリスク,依存症,自殺
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2社会問題の構造的背景
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・低成長経済,グローバル化,少子高齢化,人口減少社会,格差,貧困,社会意識・価値観の変化
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⑤福祉政策の基本的な視点
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1福祉政策の概念・理念
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・現代の社会問題と福祉政策
・福祉政策の概念・理念
・福祉政策と社会保障,社会政策
・福祉レジームと福祉政策
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⑥福祉政策におけるニーズと資源
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1ニーズ
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・種類と内容
・把握方法
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2資源
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・種類と内容
・把握方法
・開発方法
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⑦福祉政策の構成要素と過程
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1福祉政策の構成要素
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・福祉政策の構成要素とその役割・機能
・政府,市場(経済市場,準市場,社会市場),事業者,国民(利用者を含む)
・措置制度
・多元化する福祉サービス提供方式
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2福祉政策の過程
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・政策決定,実施,評価
・福祉政策の方法・手段
・福祉政策の政策評価・行政評価
・福祉政策と福祉計画
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⑧福祉政策の動向と課題
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1福祉政策と包括的支援
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・社会福祉法
・地域包括ケアシステム
・地域共生社会
・多文化共生
・持続可能性(SDGs等)
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⑨福祉政策と関連施策
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1関連政策
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・保健医療政策,教育政策,住宅政策,労働政策,経済政策
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⑩福祉サービスの供給と利用過程
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1福祉供給部門
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・公的部門(政府・地方公共団体)
・民間部門(営利・非営利),ボランタリー部門,インフォーマル部門
・部門間の調整・連携・協働
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2福祉供給過程
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・公私(民)関係
・再分配,割当
・市場,準市場
・福祉行財政,福祉計画
・福祉開発
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3福祉利用過程
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・スティグマ,情報の非対称性,受給資格とシティズンシップ
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⑪福祉政策の国際比較
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1福祉政策の国際比較
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・国際比較の視点と方法
・福祉政策の類型(欧米,東アジア等)
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内容をよくみると
ソーシャルワークのグローバル定義
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。
ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。
がこの科目で展開しているのがわかります。
特にこの科目では,欧米と日本を比較して,日本の特徴をつかむような内容が含まれているところが,「地域・民族固有の知」につながっていると考えられます。
社会に求められる社会福祉士はどのようにあるべきかを考えさせられます。
社会が絶えず変化している中,社会福祉士が学ぶべき内容が今までと同じで良いわけがありません。