社会福祉法人は,社会福祉法に規定される特別法人です。
ほかの法人に比べて,税制上の優遇などがあるのが特徴です。
その分,求められるものもたくさんあります。
その一つが「経営の原則等」です。
社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。 社会福祉法人は、社会福祉事業及び公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。 |
それでは,今日の問題です。
第32回・問題119
社会福祉法人制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉法人が行える事業は,社会福祉事業と公益事業に限定される。
2 社会福祉法人は福祉サービス提供のための法人であるため,診療を行う事業を実施できない。
3 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,設立時の寄附者に帰属する。
4 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
5 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行うため,自主的にその経営基盤の強化を図らなければならない。
問題づくりが下手なので,知識なしでもあることに気がつけば,正解できそうな問題かもしれません。
それでは解説です。
1 社会福祉法人が行える事業は,社会福祉事業と公益事業に限定される。
「限定される」が「のみである」だったら,いかがでしょうか。
どちらも同じ意味です。
「のみである」であれば,選ぶ人はほとんどいないのではないでしょうか。
試験委員もそれはよく知っているので,「のみ」「すべて」といったものは避ける傾向にあります。
社会福祉法人が行える事業は,本業である「社会福祉事業」,そして「公益事業」「収益事業」があります。
2 社会福祉法人は福祉サービス提供のための法人であるため,診療を行う事業を実施できない。
この文章が正しければ,
社会福祉法人は,診療を行う事業を実施できない。
で良いはずです。
「福祉サービス提供のための法人であるため」を加えることによって,その後に続く文章をいかにも正しく思わせる問題のつくり方をしています。
試験委員が巧妙に仕掛けたわなです。
社会福祉法人は,診療を行う事業を行うことができます。
有名なところでは,済生会病院を運営している社会福祉法人 恩賜財団 済生会があります。
現在の総裁は,秋篠宮殿下が務められています。
済生会が社会福祉士の国家試験で出題されることはほとんどありませんが,福祉を学ぶ上では重要な法人だと言えるでしょう。
国家試験に合格したら,ぜひ調べてみてください。
3 社会福祉法人が解散した際の残余財産は,設立時の寄附者に帰属する。
知識なしで消去できないのは,この選択肢です。
一時期は,社会福祉法人の合併を促したことがあるので,その頃は国家試験にもよく出題されていました。
今は,法人を合併させなくても,「社会福祉連携推進法人」という制度ができたので,またあまり出題されなくなるかもしれません。
話は戻って,この選択肢は誤りです。
〈残余財産の帰属〉
解散した社会福祉法人の残余財産は、定款の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。
前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。
社会福祉法人は,寄附した者の手を離れて,公の存在となります。
その公共性のために,税制上の優遇があるとも言えます。
4 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。
社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することができます。
5 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を行うため,自主的にその経営基盤の強化を図らなければならない。
前説の通り,これが正解です。
〈今日の注意ポイント〉
今後の国家試験では,学ばない内容を出題するかどうかはわかりません。
しかし,学ばない,つまり,勉強したことがないものを出題する時は,正解にたどり着けるように国家試験は道筋をつけているものです。
試験委員の論理に気をつけて問題を読むとかなりの確率で正解できます。
もちんそこには最低限の知識がなければなりません。
知識不足の人が合格できる試験ではありませんが,勉強で正しく理解してきた人は合格できる試験です。
私たちチームfukufuku21は,面白おかしなことは言えませんし,YouTube動画のような映像も音声もありませんが,合格するために必要な情報を提供していきます。