事例問題の多くは,特段の知識がなくても正解できます。
とは言うものの,確実に正解するのは,決して簡単なものではありません。
今日の問題は,事例をしっかりつかむことが大切です。
第32回・問題105
事例を読んで,エイズ治療拠点病院のL医療ソーシャルワーカーの,この段階における応答として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
3か月前にエイズ脳症でパートナーのMさんを看取ったAさん(50歳)が,L医療ソーシャルワーカーの下を訪れた。L医療ソーシャルワーカーは,「もう生きていけない」と悲しんでいたAさんを,Mさんの他界後も支援してきた。この日,面接室でAさんは,「Mが亡くなってからは毎日Mのことを思い出して泣き,しばらくは夢を見ているようでした。今も悲しい気持ちに変わりありませんが,最近現実を直視できるようになってきました。これからは,一人で暮らしていけると思います」と話した。
1 「よくMさんを支え続けていらっしゃいましたね」
2 「お一人で生活していけるというお気持ちは,きっと一時的なものですね」
3 「面接室でお目に掛かることもこの先ないかと思うとお別れが寂しいですね」
4 「今後のことで相談が必要となるようなことがありましたらご連絡ください」
5 「パートナーと死別した方のグループに入会しましょう」
この問題を確実に正解するためのポイントは,Aさんの言葉が手がかりとなります。
事例問題をミスする人は,事例にはこう書いてあるけれど,その裏には,別の問題が隠れているかもしれない,と考えます。
Aさんは,
今も悲しい気持ちに変わりありませんが,最近現実を直視できるようになってきました。これからは,一人で暮らしていけると思います。
と語っています。
2 「お一人で生活していけるというお気持ちは,きっと一時的なものですね」
5 「パートナーと死別した方のグループに入会しましょう」
この2つは,Aさんの言葉を信じていません。
実際のソーシャルワーク場面では,もっとたくさんの情報から考えることができますが,国家試験は,事例の情報だけを手がかりにして考えます。
そういったことから,この2つの対応は,正解になることは絶対にないと言えます。
3 「面接室でお目に掛かることもこの先ないかと思うとお別れが寂しいですね」
これが正解にならない理由は,ワーカーの気持ちを語っていることではありません。
面接室でお目に掛かることもこの先ない
ということが誤りです。
ターミネーションでは,
4 「今後のことで相談が必要となるようなことがありましたらご連絡ください」
ということを伝えます。これが1つめの正解です。ターミネーションの基本です。
関係が終わるわけではありません。アフターケアを忘れています。
もう一つの正解は,
1 「よくMさんを支え続けていらっしゃいましたね」
ターミネーションでは,クライエントの努力を肯定します。
これもターミネーションの基本です。
〈今日の注意ポイント〉
今日の問題の「この時点」とは,ターミネーションです。
国家試験では,
ターミネーションでは,これまでのワーカーの努力を肯定する。
というように出題されます。
肯定するのは,クライエントの努力です。ワーカーの努力ではありません。