システム理論と聞くと,とても難しく感じる人もいるのではないかと思います。
ソーシャルワークにおけるシステムとは,クライエントとクライエントを取り巻く環境のことです。
システム理論は,クライエントと環境は,影響し合う関係であるととらえるものです。
システム理論では,影響し合う関係のことを「交互作用」と呼びます。
システム理論を用いたソーシャルワークとは
・人と環境を調整すること。
・人の問題解決能力を高めること。
・環境の問題を解決,時には開発すること。
などといったものがあります。
しかし,あくまでも問題解決の主体はクライエントです。ワーカーはそれを側面から支援する存在です。
今回,取り上げる問題は,一般システム理論です。
びっくりするほど,難しいです。
びっくりしないで,問題を読みましょう。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題98
ソーシャルワークに影響を与えたシステム理論に関する次の説明のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホメオスタシスとは,システムが恒常性を保とうとする働きである。
2 システムとは,複数の要素が無機的に関わり合っている集合体である。
3 開放システムの変容の最終状態は,初期条件によって一義的に決定される。
4 外部と情報やエネルギーの交換を行っているのは,閉鎖システムである。
5 サイバネティックスとは,システムが他の干渉を受けずに自己を変化させようとする仕組みである。
システムには,外部に対して開かれている「開放システム」,外部に対して閉じられている「閉鎖システム」,の2つがあります。
閉鎖システムは,理論上あり得ますが,実社会の中では存在しないのではないかと思います。
ソーシャルワークが対象とするのは,当然,開放システムです。
解説します。
1 ホメオスタシスとは,システムが恒常性を保とうとする働きである。
これが正解です。
今日の問題は難しいですが,正解するのは,実はそれほど難しくはありません。
それは,これが正解だからです。
ホメオスタシスとは,もともと医学用語で,「恒常性」と訳されるものです。
人は,恒温動物です。気温が変化しても,体温は一定に保たれます。
これは,身体には,ホメオスタシスの機能があるからです。
システムも,外部のシステムが大きく変化しても,一定の環境を保とうとするように働きます。
医学用語を応用して,システム理論でもこの働きをホメオスタシスといいます。
2 システムとは,複数の要素が無機的に関わり合っている集合体である。
無機的とは,変化しないという意味です。
システムは,絶えず変化していきます。これを「有機的」といいます。
3 開放システムの変容の最終状態は,初期条件によって一義的に決定される。
選択肢2で述べたように,システムは,絶えず変化しています。
当然,初期と現在は異なります。
なお,システムの変容には,最終状態というのは存在しません。未来も絶えず変化していくからです。
4 外部と情報やエネルギーの交換を行っているのは,閉鎖システムである。
外部と情報やエネルギーの交換を行っているのは,開放システムです。
5 サイバネティックスとは,システムが他の干渉を受けずに自己を変化させようとする仕組みである。
サイバネティックスとは,システムが他の干渉を受けながら,自己を変化させようとする仕組みのことです。
〈今日の注意ポイント〉
システムは,絶えず変化していきます。
しかし,変化しないで,一定に保とうとする働きもあります。それがホメオスタシスです。
この2つをおおよそ押さえることができれば,今日は十分です。