ソーシャルワーク系の科目は,事例問題があるので点数が取りやすいと思っている人は多く,そのため,ほかの科目よりも勉強する時間を多くかけない人もいるようです。
事例問題は正解して当然です。
ソーシャルワーク系にはカタカナ用語が多いので,勉強しないと意味がわかりません。
今日のテーマのアウトリーチは,ソーシャルワークを真面目に学ぶ人にとっては必ず見聞きしたことがあるものでしょう。
しかし,知らない人にとっては,想像がつかないと思います。
アウトリーチはともかく,ソーシャルワーク系の科目はカタカナ用語が多いので,勉強不足の人は得点を稼ぐことが不可能です。
苦手科目をカバーすることはとうていできないことでしょう。
ということで,ソーシャルワーク系の科目もほかの科目と同じように時間をかけて勉強する必要があります。
ここで戦略を間違うと合格は遠のいてしまいます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題110 アウトリーチに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 支援を求めて相談室を訪れるクライエントを対象とする。
2 相談援助過程の援助開始時だけではなく,援助が始まった後も有効である。
3 慈善組織協会(COS)の友愛訪問員活動に起源を持つ。
4 所属機関のバックアップを必要としない対応方法である。
5 地域住民とのつながりの構築は不要である。
アウトリーチは地域に出かけていって,ニーズをキャッチすることをいいます。
アウトリーチのもともとの意味は,腕を外に伸ばすことで,アウトリーチの地域に出かける様子がまさしく腕を外に伸ばすように見えることからその名がついています。
この問題は,アウトリーチを知っていて,その知識をもとに思考して,答えを出すタクソノミーⅡ型です。その分,少し高度です。
それでは解説です。
1 支援を求めて相談室を訪れるクライエントを対象とする。
アウトリーチは,訪室するクライエントを待っているものではなく,地域に積極的に出かけていく支援法です。
2 相談援助過程の援助開始時だけではなく,援助が始まった後も有効である。
これが―つめの正解です。
援助が始まった後には,モニタリング,アフターケアなどがありますが,これらにはアウトリーチも含まれます。
3 慈善組織協会(COS)の友愛訪問員活動に起源を持つ。
もう一つの正解はこれです。
COSを知らない人はいないと思います。知らないという人は,今,ここで調べて覚えておきたいです。
友愛訪問員活動はCOSが行った援助方法です。
ケースワークの起源ではないの? と思って選ばなかった人もいるのではないかと思います。
しかし,訪問なので,アウトリーチの起源でもあります。ここが思考のしどころです。
なお,近年の研究によって,イギリスCOSでは,「友愛訪問」と言わず,「地区訪問」と言っていたことが明らかになっています。
友愛訪問は,アメリカCOSで誕生した用語らしいです。
日本社会福祉学会の第62回秋季大会で,沖縄大学の富樫八郎先生が
ロンドンC.O.S「友愛訪問員」及び病院「アルモナー」記述に関する検討
という研究を発表しています。
https://www.jssw.jp/conf/62/pdf/A02-4.pdf
医療ソーシャルワーカーの源流であるアルモナーとともに新しいカリキュラムのテキストにどのように記述されているのか楽しみです。
4 所属機関のバックアップを必要としない対応方法である。
この選択肢も一度考えなけれぱなりません。
さて,アウトリーチは本当に所属機関のバックアップを必要としないのでしょうか。
それぞれで考えてみましょう。
アウトリーチは,外に出かけていくため,時間も費用も多くかかります。
所属機関がそれを許してくれることも必要でしょう。
アウトリーチでは,より複雑な課題を抱えた福祉ニーズを発見することもあります。
それをワーカーが一人で抱えると大変なことになります。
スーパービジョンがより必要になるでしょう。
こういったことを国試会場で瞬時に考えなければなりません。
第37回からは国試の問題数が減りますが,おそらく問題が減る分,試験時間も短くなるのではないかと思います。
知識を想起するだけで答えを出せるタクソノミーⅠ型の問題と異なり,タクソノミーⅡ型,Ⅲ型は,思考を1回,あるいは2回必要とします。
その分,答えを出すのに時間がかかるはずです。
思考する訓練が必要です。
5 地域住民とのつながりの構築は不要である。
一度考えることが必要です。
この選択肢は誤りですが,地域住民のつながりの構築はどんな時に必要なのでしょうか。
社会福祉士の国家試験では,アウトリーチの方法として住民懇談会が登場します。
町内会との関係がないとおそらく住民懇談会は成功しません。
〈今日の一言〉
ソーシャルワーク系の科目は意外と難しい
今日の問題は,アウトリーチを取り上げました。
それほど難しいものではありませんが,カタカナ用語であることとタクソノミーⅡ型であることから,確実な知識と柔軟な思考が求められています。
まずは確実な知識を必要とすることを忘れてはなりません。