ソーシャルワークにはさまざまなアプローチがありますが,国家試験で出題されているのは,わすが12種類です。
様々なアプローチのまとめのまとめ(永久保存版)
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/05/blog-post_31.html
今回は,このうちのエコロジカルアプローチを取り上げたいと思います。
エコロジカルアプローチは,「人と環境」の交互作用に着目した援助法です。
システム理論に基づいたアプローチであることを理解しておきたいです。
それでは今日の問題です。
第34回・問題99 次の記述のうち,ジャーメイン(Germain,C.)によるエコロジカルアプローチの特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 空間という場や時間の流れが,人々の価値観やライフスタイルに影響すると捉える。
2 モデルとなる他者の観察やロールプレイを用いる。
3 クライエントのパーソナリティの治療改良とその原因となる社会環境の改善を目的とする。
4 問題の原因を追求するよりもクライエントの解決イメージを重視する。
5 認知のゆがみを改善することで,感情や行動を変化させ,問題解決を図る。
とても難しい問題ですが,人と環境に関連するものに着目して改めて読んでみると,選択肢
以外には考えられません。
1 空間という場や時間の流れが,人々の価値観やライフスタイルに影響すると捉える。
「時間の流れ」が環境に結び付けて考えるのは難しいかもしれませんが,「空間という場」は,環境っぽいと考えられそうです。
環境とは,人を取り巻くすべてのものです。
これに置き換えると・・・
人を取り巻くすべてのものは,人々の価値観やライフスタイルに影響すると捉える。
これなら理解できそうです。
ほかのものも解説します。
2 モデルとなる他者の観察やロールプレイを用いる。
これは,SST(社会生活技能訓練)です。
3 クライエントのパーソナリティの治療改良とその原因となる社会環境の改善を目的とする。
これは,心理社会的アプローチです。
4 問題の原因を追求するよりもクライエントの解決イメージを重視する。
これは,解決志向アプローチです。
5 認知のゆがみを改善することで,感情や行動を変化させ,問題解決を図る。
これは,認知行動療法,あるいは認知療法です。
次は,事例問題です。
第31回・問題99 事例を読んで,外国籍住民を支援する団体のKソーシャルワーカー(社会福祉士)が,エコロジカルアプローチの視点から今後行う取組として,より適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
P国籍のLさん(30歳,女性)は半年前に来日した。Mさんなど一部の日本人住民に挨拶をしても無視されることが度々あり,Lさんは疎外感を覚えている。LさんはMさんなど近隣の日本人住民と交流しながら住み続けたいと考えているが,Lさん自身はMさんらに何も伝えることができない。このためLさんは,Kソーシャルワーカーに相談した。
1 Lさんの了解を得て,Lさんに対する思いについてMさんらに尋ねる。
2 この地区の民生委員に問題解決・再発防止の仕組み作りを任せる。
3 日本人住民との良好な関係作りのためにLさんができることを,一緒に考える。
4 疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する。
5 Lさんに,Mさんらに対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。
環境とは,人を取り巻くすべてのものです。
エコロジカルアプローチに関するものでなくても消去できるものも含まれています。
2 この地区の民生委員に問題解決・再発防止の仕組み作りを任せる。
こういうものを含めないと5つの選択肢を作れないというのは,試験委員の力量不足でしょう。
今後は,こういった選択肢はなくなると思います。
それでは正解です。
1 Lさんの了解を得て,Lさんに対する思いについてMさんらに尋ねる。
3 日本人住民との良好な関係作りのためにLさんができることを,一緒に考える。
選択肢1は,環境であるMさんらに働きかけています。
選択肢3は,人であるLさんに,環境に向けて働きかけています。
この2つによって,人と環境の交互作用が期待できそうです。
4 疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する。
これが正解にならないのは,集まりに参加するのは,Lさんの疎外感緩和のためです。
単に疎外感緩和のためなら適切でしょう。
しかし,Lさんが感じている疎外感は,Mさんなど一部の日本人住民に挨拶をしても無視されることです。
これが変わらないとLさんの問題解決にはなりません。
5 Lさんに,Mさんらに対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。
これは,Lさんに対するものであり,エコロジカルアプローチだとは言えません。
むしろ問題解決アプローチの視点だと言えます。