今回は,日常生活自立支援事業を取り上げます。
日常生活自立支援事業とは,判断能力が不十分な認知症高齢者,知的障害者,精神障害者などが地域で自立した生活が送れるように利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用援助等を行うものです。
以下は,厚生労働省のホームページに書かれているものです。
実施主体 |
都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施) |
対象者 |
判断能力が不十分な方(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等であって,日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手,理解,判断,意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方) 本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方 |
援助の内容 |
本事業に基づく援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 福祉サービスの利用援助 苦情解決制度の利用援助 住宅改造,居住家屋の貸借,日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等 上記に伴う援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理) 定期的な訪問による生活変化の察知 |
それでは,今日の問題です。
第31回・問題81 日常生活自立支援事業の利用等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 成年後見人による事業の利用契約の締結は,法律で禁じられている。
2 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは,法律で禁じられている。
3 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
4 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,職権により本人の利用を開始することができる。
5 契約締結に当たって,本人の判断能力に疑義がある場合は,市町村が利用の可否を判断する。
日常生活自立支援事業は覚えるものが少ないので,どのように出題されてもよいように準備しておきたいです。
それでは,解説です。
1 成年後見人による事業の利用契約の締結は,法律で禁じられている。
成年後見人は,法律行為に対する代理権が付与されています。
利用契約は,法律行為ですから,成年後見人は利用契約の締結を行うことができます。
2 法定後見のいずれかの類型に該当する程度に判断能力が低下した本人が事業の利用契約を締結することは,法律で禁じられている。
日常生活自立支援事業の利用契約を締結するためには,本人の判断能力があることが必要です。
しかし,法律で禁じてしまうのは制度を使いにくいものにしてしまいます。
そのため,本人の判断能力に疑義がある場合は,契約締結審査会が利用の可否を判断します。
3 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,事業の一部を市区町村社会福祉協議会に委託することができる。
これが正解です。
事業の一部は,市区町村社会福祉協議会等の法人に委託することができます。
4 実施主体である都道府県社会福祉協議会は,職権により本人の利用を開始することができる。
成年後見制度と混乱させるように出題した問題でしょう。
職権ではなく,契約によって利用を開始することができます。
5 契約締結に当たって,本人の判断能力に疑義がある場合は,市町村が利用の可否を判断する。
選択肢2で紹介したように,契約締結に当たって本人の判断能力に疑義がある場合に利用の可否を判断するのは,契約締結委員会です。
日常生活自立支援事業では,今日の問題に出てきたもののほかに,運営適正化委員会,専門員,生活支援員なども出題されます。