福祉事務所は,社会福祉法で規定されているものです。
設置しなければならないのは,都道府県と市です。
町村の設置は任意です。
市町村が設置する福祉事務所が扱う法
・生活保護法
・児童福祉法
・母子及び父子並びに寡婦福祉法
・老人福祉法
・身体障害者福祉法
・知的障害者福祉法
都道府県が設置する福祉事務所が扱う法
・生活保護法
・児童福祉法
・母子及び父子並びに寡婦福祉法
もともとは,都道府県福祉事務所も市町村福祉事務所と同じく六法を扱っていましたが,現在は「老人福祉法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」に関する事務は,市町村に権限移譲されています。
「老人福祉法」「身体障害者福祉法」の事務が市町村に移譲されたと聞いて,ピンと来た人はかなり勉強が進んでいる人です。
権限移譲されたのは,1990(平成2)年のいわゆる「福祉関係八法改正」です。
福祉関係八法改正で何が変わったのか?
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/09/blog-post_25.html
福祉関係八法改正は,極めて重要な改正です。単に過去のものだと思っていると痛い目に遭います。歴史は過去の出来事ではありません。
福祉事務所はかなり重要なので,どんな問題が出題されても確実に正解できるような知識を持ちたいです。
社会福祉法の福祉事務所の規定は,目を通して覚えておくことが必要です。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題67 社会福祉法に定める福祉に関する事務所(福祉事務所)の組織と業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,都道府県知事又は市町村長の事務の執行に協力する機関である。
2 現業を行う所員は,援護,育成又は更生の措置を要する者の家庭を訪問するなどして,生活指導を行う事務をつかさどる。
3 厚生労働大臣の定める試験に合格しなければ,社会福祉主事になることができない。
4 福祉事務所の長は,福祉事務所の指導監督を行う所員の経験を5年以上有した者でなければならない。
5 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,社会福祉主事でなくてもよい。
この問題と類似したものは,これまで何度出題されたか数えるのも面倒になるくらいの出題頻度です。
しかし,勉強不足の人は正解することができません。つまり国家試験に向いた問題です。
今後は,こういって知識を想起することで解ける単純な問題は少なくなり,知識を基盤とした解釈が必要な問題に切り替わっていくでしょう。
そうなると,知識不足の人はますます正解するのが難しくなります。
それでは解説です。
1 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,都道府県知事又は市町村長の事務の執行に協力する機関である。
協力機関は,民生委員です。
福祉事務所の指導監督を行う所員(査察指導員)及び現業を行う所員(ケースワーカー)は,社会福祉法に定める社会福祉主事でなければなりません。
社会福祉主事は,生活保護法で「都道府県知事又は市町村長の事務の執行を補助するものとする」と規定されています。
これを補助機関といいます。
現行生活保護法では,
民生委員 → 協力機関
社会福祉主事 → 補助機関
と規定されます。
補助とは,事務を実際に行うことを指していますが,このような言い方になっているのは,都道府県知事又は市町村長が自ら事務を行うのは困難だからです。
2 現業を行う所員は,援護,育成又は更生の措置を要する者の家庭を訪問するなどして,生活指導を行う事務をつかさどる。
これが正解です。
社会福祉法では現業を行う所員(ケースワーカー)の職務を以下のように,規定されます。
現業を行う所員は、所の長の指揮監督を受けて、援護、育成又は更生の措置を要する者等の家庭を訪問し、又は訪問しないで、これらの者に面接し、本人の資産、環境等を調査し、保護その他の措置の必要の有無及びその種類を判断し、本人に対し生活指導を行う等の事務をつかさどる。
3 厚生労働大臣の定める試験に合格しなければ,社会福祉主事になることができない。
社会福祉主事になるルートはいくつかありますが,いずれも試験はありません。
出典:厚生労働省ホームページ 「社会福祉主事任用資格の取得方法」
4 福祉事務所の長は,福祉事務所の指導監督を行う所員の経験を5年以上有した者でなければならない。
福祉事務所の長になるのに実務経験は問われません。
5 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,社会福祉主事でなくてもよい。
先述のように,福祉事務所の指導監督を行う所員(査察指導員)及び現業を行う所員(ケースワーカー)は,社会福祉主事でなければなりません。