作業療法士は,理学療法士及び作業療法士法という理学療法士と同じ法律によって規定される国家資格です。
ところで,理学療法と作業療法の違いを明確に説明できますか?
法では以下のように規定されています。
理学療法
身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
作業療法
身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
それぞれが用いる方法も異なりますが,押さえておきたいのは,その対象です。
理学療法の対象者
身体に障害のある者
作業療法の対象者
身体又は精神に障害のある者
精神障害者を対象とするのは作業療法です。
さて,今回は,作業療法士の国家試験にタクソノミーⅡ型,Ⅲ型に分類される問題がどのように出題されているのかを見てみたいと思います。
※問題は,いずれも2021年2月に実施された第56回国家試験のものです。
タクソノミーⅡ型だと思われる問題
午前・問題6 80歳の女性。77歳頃から物忘れが目立ち始め、今では歩行時のつまずきやすさ、書字の震えがある。日によって程度は異なるものの、自宅のテレビや窓、棚のガラス戸など、光沢のあるところに知らない人が映って見えるようになった。「テレビに知らない人の顔が見える」「変なおじいさんが裸でいる」などと家族に訴え、ガラス戸に向かって怒鳴る様子もみられた。家族と物忘れ外来を受診した。PETでは頭頂葉から後頭葉の一部に糖代謝の低下が認められた。
作業療法士から家族へのアドバイスとして適切なのはどれか。
1.部屋を薄暗くする。
2.テレビの音を大きくする。
3.移動の際には車椅子を使用させる。
4.興奮したときはきっぱりと幻覚であることを伝える。
5.見えている内容を否定しないで気持ちを受け止める。
これはおそらく事例を読まなくても正解できてしまうので,タクソノミーⅡ型の問題だとすれば,あまりよくないものでしょう。
正解は5です。
午前・問題7 66歳の女性。左変形性股関節症。後方アプローチによる人工股関節全置換術を受けた。全荷重で術後リハビリテーション中である。
退院後の生活指導として正しいのはどれか。
1.和式トイレを使用する。
2.椅子に座る際には足を組む。
3.椅子は通常よりも低いものを選ぶ。
4.床のものを拾うときには非術側を前に出す。
5.端座位で靴にかかとを入れるときは外側から手を伸ばす
最初に紹介した問題よりも少しはましになっていますが,この問題でも事例を読まなくても消去できそうな選択肢があります。
正解は,選択肢4だそうです。
タクソノミーⅢ型だと思われる問題
午前・問題3 25歳の男性。頸髄完全損傷。手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない。書字の際のボールペンを把持した場面別冊(No.1)を別に示す。
片手では困難で、両手でボールペンを保持する動作が観察された。
このような動作を行う頸髄損傷患者のZancolliの四肢麻痺上肢機能分類の最上位レベルはどれか。
1.C5A
2.C6A
3.C6B3
4.C7A
5.C8B
別冊
今まで紹介してきた資格にも実はこの問題と同じように資料を見て判断する問題があります。
医療系資格では,このタイプの問題は作りやすいと思います。
しかし,社会福祉士の国家試験で同じようなスタイルで出題するのは,ちょっと難しいかもしれません。
ここまででわかってきたタクソノミーⅢ型の問題は,
①最初に事例を提示して,そのあとに別の事例を答えさせるもの。
②事例を提示して,それに関係する資料を提示して答えさせるもの。
の2種類があるようです。
次回は,薬剤師の国家試験問題を見てみたいと思います。