2022年5月16日月曜日

意外と重要な朝日訴訟

朝日訴訟は,憲法で保障される生存権について争ったものとして有名です。


ここでは詳しく紹介しませんが,一度調べておくと良いでしょう。

ネットで調べると数多くの情報があります。


覚えてほしいのは,


憲法第25条の内容については立法府の広い裁量に委ねられていますが,著しい濫用や逸脱があった場合,司法審査の対象となる。


という一点です。


それでは今日の問題です。


第31回・問題77 生存権に係るこれまでの最高裁判例の主旨に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 厚生労働大臣の裁量権の範囲を超えて設定された生活保護基準は,司法審査の対象となる。

2 公的年金給付の併給調整規定の創設に対して,立法府の裁量は認められない。

3 恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険料減免の対象としない条例は,違憲である。

4 生活保護費の不服を争う訴訟係争中に,被保護者本人が死亡した場合は,相続人が訴訟を承継できる。

5 生活保護受給中に形成した預貯金は,原資や目的,金額にかかわらず収入認定しなければならない。 

(注) 判決当時は厚生大臣であったものも厚生労働大臣と表記している。


この問題は,消去法では正解できません。


朝日訴訟を知らなければ,おそらく正解するのは難しいと言えます。


それでは,解説です。


1 厚生労働大臣の裁量権の範囲を超えて設定された生活保護基準は,司法審査の対象となる。


これが正解です。


過去に何度も繰り返して出題されている内容です。確実に押さえておきたいです。


2 公的年金給付の併給調整規定の創設に対して,立法府の裁量は認められない。


堀木訴訟という朝日訴訟と並ぶくらいに有名な訴訟に関連した出題です。


最高裁は,公的年金給付の併給調整規定の創設に対して,立法府の裁量は認められるという判断がなされています。


3 恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険料減免の対象としない条例は,違憲である。


これは,旭川市国保料訴訟に関するものです。


最高裁は,恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険料減免の対象としない条例は,違憲とは言えないという判断が示されています。


4 生活保護費の不服を争う訴訟係争中に,被保護者本人が死亡した場合は,相続人が訴訟を承継できる。


これも朝日訴訟に関連したものです。


生活保護法では,生活保護を受ける権利には譲渡の禁止が規定されています。


朝日訴訟は,もともと保護基準に関するものだったので,原告の朝日茂さんが亡くなったことを理由に裁判は終わりました。


5 生活保護受給中に形成した預貯金は,原資や目的,金額にかかわらず収入認定しなければならない。


これは,中島訴訟に関連したものです。


最高裁は,生活保護受給中に形成した預貯金が目的に合ったものなら,収入認定しなければならない資産に当たらないという判断が示されています。



〈今日の一言〉


朝日訴訟と堀木訴訟に関連するものは,確実に覚えておくこと

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