これまで,医師,看護師,保健師,助産師,理学療法士,作業療法士の国家試験を見てきました。
それでわかってきたのは,タクソノミーⅢ型に分類される問題は2種類あることです。
①最初に事例を提示して,そのあとに別の事例を答えさせるもの。
②事例を提示して,それに関係する資料を提示して答えさせるもの。
今回は薬剤師の国家試験の問題を取り上げます。
薬剤師の国家試験は,「必須問題」「薬学理論問題」「薬学実践問題」に分かれています。
必須問題と薬学理論問題は,タクソノミーⅠ型~Ⅲ型で構成されています。
薬学実践問題は,すべてタクソノミーⅢの問題が出題されています。
※問題は,いずれも令和4年2月に実施された第107回国家試験のものです。
まずは,「①最初に事例を提示して,そのあとに別の事例を答えさせるもの」タイプの問題です。
問196−197 17歳男性。身長175cm、体重72kg。悪性軟部肉腫に対し、以下の処方で初期治療を行うことになった。
(処方)
ドキソルビシン塩酸塩注射用 120mg
生理食塩液 50mg 1本
30分かけて点滴静注
問196(実務)
この処方を調製する際には、難溶性の凝集体が生成することがある。確実に溶解させるための操作として、適切なのはどれか。2つ選べ。なお、処方にない溶解液を用いる場合は、医師に確認した上で行うものとする。
1 微量の生理食塩液をゆっくり加えて攪拌後、生理食塩液50mL に混合する。
2 溶解に必要な量の生理食塩液を素早く加えて攪拌後、生理食塩液50mLに混合する。
3 溶解に必要な量の注射用水を素早く加えて攪拌後、生理食塩液50mLに混合する。
4 溶解に必要な量の ₇ %炭酸水素ナトリウム液を素早く加えて攪拌後、生理食塩液50mL に混合する。
5 溶解に必要な量の10%塩化ナトリウム液を素早く加えて攪拌後、生理食塩液50mLに混合する。
問197(物理・化学・生物)
前問の難溶性凝集体が生成する相互作用として、適切なのはどれか。1つ選べ。
なお、ドキソルビシン塩酸塩の構造式は以下のとおりである。
※構造式は,ここでは割愛
1 r-rスタッキング
2 配位結合
3 疎水性相互作用
4 水素結合
5 電荷移動相互作用
ちなみに正解は,問196が2と3,問197が1です。
このような複数問で形成されるタクソノミーⅢ型の問題は,国家試験によって2問で形成されるものと3問で形成されるものがあります。
薬剤師の問題は,2問で形成するタイプです。
次は「②事例を提示して,それに関係する資料を提示して答えさせるもの」タイプの問題です。
正解は,選択肢1と5です。
〈今日の一言〉
今のところ,社会福祉士の国家試験には,このような資料問題は出題されていません。
しかし,今後は資料を含めた問題はあり得ます。
自然科学系のものなら答えは明確ですが,社会科学系のものは,解釈によって答えが分かれてしまう恐れがあります。
そのため,問題は明確な根拠を持って作られます。これはタクソノミーⅢ型の問題に限ったことではありません。
この根拠に着目して問題を解くことで,得点力はグーンとアップすることでしょう。