クーリング・オフ制度は,特定商取引法に規定されています。
さて,いきなり問題です。
次のうち,クーリング・オフ制度によって,解約できないのはどれでしょうか。
①訪問販売
②通信販売
③電話勧誘版売
正解は,「②通信版売」です。通信販売は,クーリング・オフ制度が適用されません。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題82 事例を読んで,特定商取引に関する法律に規定するクーリング・オフによる契約の解除(解約)に関して,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
一人暮らしのDさんは,訪れてきた業者Eに高級羽毛布団を買うことを勧められ,代金80万円で購入する契約を締結し,その場で,Dさんは業者Eに対して,手元にあった20万円,を渡すとともに,残金60万円を1か月以内に送金することを約束し,業者Eは,商品の布団と契約書面をDさんに引き渡した。
1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。
2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者Eに到達した場合は,解約できない。
3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。
4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20万円を返還しなければならない。
5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。
この問題はクーリング・オフ制度を少し知っていればそんなに難しくないと思いますが,実は混乱するような仕掛けがされています。
国家試験は,とても怖いものです。
それでは解説です。
1 Dさんが業者Eに対して解約の意思を口頭で伝えた場合は,解約できない。
解約は,書面で行います。しかし,口頭で解約を伝えても有効です。
2 Dさんは取消期間内に解約書面を発送したが,取消期間経過後にその書面が業者Eに到達した場合は,解約できない。
クーリング・オフができる期間は定められています。
例えば,訪問販売の場合は8日間です。
その期間内に書面を発信すれば,解約は有効です。
クーリング・オフの起算日は,契約書を受け取った日です。
8日を過ぎていても書面を受け取っていなければ,クーリング・オフできます。
訪問販売業者がそんなミスをするとは思えませんが,覚えておくとよいと思います。
この事例の場合は「契約書面をDさんに引き渡した」と明記されています。
もしこの表記ではなく「契約書面は引き渡されていない」と書かれていたら,期間に関係なく解約できることになります。
3 Dさんが商品の布団を使用してしまった場合は,解約できない。
使用しても期間内なら,無条件で解約できます。
もし業者が「使用してしまったら解約できない」と偽って,解約を妨害した場合は,期間を過ぎていても解約できます。
4 Dさんが解約した場合,業者Eは受領済みの20万円を返還しなければならない。
これが正解です。
既に渡してしまった代金もクーリング・オフによって戻ってきます。
5 Dさんが解約した場合,Dさんの負担によって布団を返送しなければならない。
これが要注意の選択肢です。
通信販売で解約した人は,引っ掛けられる恐れがあるのです。
前説に書いたように,通信販売も特定商取引法の対象ですが,クーリング・オフ制度は適用されません。
訪問販売や電話勧誘などにクーリング・オフ制度があるのは,突然の話で契約するので,冷静に考える期間を設けて消費者を守るためです。
それに対して,通信販売の多くは,消費者から連絡して申込みするので,訪問販売などよりも冷静に申し込みをしていると考えられるからです。
通信販売の場合は,業者が返品特約表示を行うことが義務づけられています。
「ノークレーム,ノーリターン」という返品特約表示も有効です。
大手の通信販売業者は,期間を設けて解約できることを表示しています。
その場合に,受け取った商品を返品することになりますが,クーリング・オフではないので,多くの場合,その送料は消費者が負担します。
このような理由から,通信販売で返品した経験がある人は,クーリング・オフの返品には送料を負担しなければならないと思ってしまうのです。
〈今日の一言〉
消費者契約法も覚えておくこと
この法律も契約を取り消すことができることを定めたものです。
クーリング・オフ制度の期間を過ぎていても,ケースによっては解約できることがあります。
成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い,解約できる範囲が広がっています。
そのため,現時点ではとても重要なものだと言えるでしょう。