尺度水準とは,測定したデータをその性質によって分類したものです。
一般的には,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の4つが知られます。
名義尺度 |
測定したものを区別するものの意味しかない。使える代表値は,最頻値のみ。 〈例〉 1.日本人 2.アメリカ人 3.イギリス人 4.中国人 5.その他 1から5までの数字があるが,その数字には意味がない。 |
間隔尺度 |
数値の大小だけに意味があるもの。使える代表値は,最頻値,中央値。 〈例〉 果物の好き嫌いについて りんご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い みかん 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い いちご 1.大好き 2.好き 3.ふつう 4.嫌い 5.大嫌い |
間隔尺度 |
数値の大小に意味をもち,間隔は等しいもの。使える代表値は,最頻値,中央値,平均値。 〈例〉 気温 |
比例尺度 |
数値の大小に意味をもち,間隔は等しいもの。間隔尺度と異なるのは,ゼロ以下はないこと。使える代表値は,最頻値,中央値,平均値。 〈例〉 体重・身長 |
それでは,今日の問題です。
第31回・問題86 測定と尺度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 測定とは,一定の規則や基準を用いて,調べたい対象の経験的な特性に数値や記号を与える手続である。
2 信頼性とは,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことをいう。
3 妥当性とは,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことをいう。
4 社会調査の測定では,信頼性と妥当性のどちらかが満たされていればよい。
5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度という四つの尺度水準のうち,大小関係を測定することができるのは,名義尺度である。
なかなかの難問です。この機会に確実に押さえておきたいです。
さて,この問題の正解は,選択肢1です。
1 測定とは,一定の規則や基準を用いて,調べたい対象の経験的な特性に数値や記号を与える手続である。
これが正解ですが,測定を定義するとこんなに難しい表現になるようです。
この文章が難しいのは「経験的な特性」でしょう。
「経験的」の対義語は「理論的」などです。
「理論的」というのは,実際に調べなくてもわかっていること。
「経験的」というのは,実際に調べてわかること。
といった意味です。
この文章を簡単に書くと,測定とは,調べようと思ったものを実際に調べてそれをある基準で表わすことをいう,といった意味合いになります。
目の前にいる人の国籍を調べることを例に考えます。
この場合,国籍が尺度です。理論的には国籍はわかりません。
実際に聞くなり,アンケートに答えてもらうなり,といった方法で調べることが必要です。
これが経験的な特性という意味です。
それでは,ほかの選択肢も見てみます。
2 信頼性とは,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことをいう。
3 妥当性とは,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことをいう。
この2つは,信頼性と妥当性を入れ替えています。
信頼性は,同じ調査をもう一度行ったときに同じ結果になる安定性のことです。
妥当性は,測定したい概念をどのくらい正確に測定できているか,という測定の適切性のことです。
このような「セット入れ替え作問法」が使われた問題は,受験生にとってラッキーです。入れ替えに気づくと得点力が上がります。
4 社会調査の測定では,信頼性と妥当性のどちらかが満たされていればよい。
信頼性と妥当性は,研究や実験などを行う際に必要ですが,もちろか社会調査も同じです。
信頼性が低い調査方法であれば,結果が異なってしまいます。
5 名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度という四つの尺度水準のうち,大小関係を測定することができるのは,名義尺度である。
名義尺度は,数値に意味がないので,大小関係は測定することができません。
国籍では,
1.日本人
2.アメリカ人
という例を出しましたが,
1.アメリカ人
2.日本人
と数値を割り当てても良いです。
名義尺度以外は,大小関係を測定することができます。