福祉事務所を設置しなければならないのは,都道府県と市です。
町村の設置は任意です。
現時点(令和3年)で福祉事務所を設置している町村は,全国で45町村にとどまります。
福祉事務所を設置していなくても,町村には役割・機能があります。
福祉事務所を設置していない町村の役割・機能
社会福祉法 第十八条 |
生活保護法 第十九条 一 要保護者を発見し,又は被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合において,速やかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を通報すること。 二 第二十四条第十項の規定により保護の開始又は変更の申請を受け取つた場合において,これを保護の実施機関に送付すること。 三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,被保護者等に対して,保護金品を交付すること。 四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合において,要保護者に関する調査を行うこと。 第二十四条 |
福祉事務所を設置していなくても,やるべきことはたくさんあります。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題66 福祉事務所を設置していない町村の役割・機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。
2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。
3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。
4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。
5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。
答えは,すぐわかるかもしれませんが,一応解説します。
1 町村は,社会福祉主事を置くことができる。
これが正解です。
社会福祉主事は福祉事務所に配置されるという固定観念があると正解できないかもしれません。
社会福祉主事は,福祉事務所には配置しなければなりません。
しかし,福祉事務所を設置していない町村も任意で配置することができます。
何を行うかと言えば,
老人福祉法,身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法に定める援護又は更生の措置に関する事務
この三法は,市町村が取り扱っているためです。
2 町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の変更を決定することができる。
町村は,生活保護法における保護の変更の申請を受け取ったときは,保護の実施機関に送付します。
3 保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできない。
保護の実施機関は,町村に対し被保護者への保護金品の交付を求めることはできます。
例えば,公営住宅への入居などです。
4 町村は,被保護者に対し必要な指導又は指示をすることができる。
被保護者に対し必要な指導又は指示を行うことはできません。
保護の実施機関が行うことです。
指導又は指示を市町村も行うことになると,保護の実施機関と重なってしまいます。
法制度は,絶対にこういったことはありません。
これは,ウェーバーが示した官僚制の特徴でもあります。
担当する部署が最も専門性が高いのです。
そのため,法を飛び越えることもありません。だから制度のすき間が生じることもあります。
既存の制度では想定していなかった新しい福祉ニーズが生じた場合,従来の枠組みでは対応が困難になるのは,こういった理由からです。決して職務怠慢だからではありません。
5 保護の開始の申請は,町村を経由して行うことができない。
保護の開始又は変更の申請は,町村長を経由してすることもできます。