〈成年後見開始〉
精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く常況にある者について,家庭裁判所は,本人,配偶者,四親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人,保佐監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求により,後見開始の審判をすることができます。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題83 次の事例を読んで,Q市福祉課職員の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Q市に居住するMさん(80歳,女性)は,40年前に離婚し,その後再婚した。再婚した夫には,再婚時に既に成人し家庭を設けている子がいたが,再婚に反対し,再婚後もMさんとの交流を拒絶している。その夫も5年前に亡くし,Mさんは2,000万円の財産を相続した。Mさんは,最近,認知症が進行し,悪質商法の被害にも遭っているようで,民生委員が心配してQ市福祉課職員にMさんの成年後見制度の利用に関して相談に来た。
1 民生委員に,成年後見開始の審判の申立てを依頼する。
2 Mさんに実子がいる場合,実子に成年後見開始の審判の申立てを命じる。
3 再婚相手の子に,成年後見開始の審判の申立てを命じる。
4 市長申立てによる成年後見開始の審判の手続を検討する。
5 前夫が生存している場合,前夫に成年後見開始の審判の申立てを依頼する。
「申立てできるのは,だれ?」
という問題です。登場人数が多く,複雑ですね。冷静に考えてみましょう。
解説です。
1 民生委員に,成年後見開始の審判の申立てを依頼する。
民生委員は,申立てすることはできません。
2 Mさんに実子がいる場合,実子に成年後見開始の審判の申立てを命じる。
申立ては権利であって,義務付けするものではありません。
こういったときに用いられるのが市町村長申立てです。
3 再婚相手の子に,成年後見開始の審判の申立てを命じる。
再婚相手の子は,養子縁組をすることで,Mさんの子となります。
この事例では,Mさんとの交流を拒絶しているということからおそらく養子とはなっていないのではないかと考えられます。
しかし,もし養子になっていたとしても,選択肢2と同じように,家庭裁判所が申立てを命じるということはないので誤りです。
4 市長申立てによる成年後見開始の審判の手続を検討する。
これが最も適切です。
こういったときに行われるのが市町村長による申立てです。
四親等以内の親族がいたとしても,申立てすることができなければ,変わって市町村長が申立てを行います。
先日紹介したように,令和2年では,申立人と本人との関係で最も多いのは,市区町村長となっています。
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/06/blog-post_21.html
5 前夫が生存している場合,前夫に成年後見開始の審判の申立てを依頼する。
前夫と再再婚していれば,配偶者として申立てを行うことができます。
しかし,この事例ではそのことを裏づける情報はありません。