今回は,知的障害者福祉法を取り上げます。
三障害の法律で,障害者の定義が出題されたときは,知的障害者福祉法は要注意です。
というのは,知的障害者福祉法では,知的障害者の定義がなされておらず,療育手帳も法に規定されていません。
知的障害者更生相談所 |
・都道府県は、知的障害者更生相談所を設けなければならない。 ・知的障害者の福祉に関し、主として市町村の更生援護の実施に関し、市町村相互間の連絡及び調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うこと並びにこれらに付随する業務を行う。 ・知的障害者に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行う。 ・十八歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行う。 ・知的障害者更生相談所は、必要に応じ、巡回して、前項の業務を行うことができる。 |
知的障害者福祉司 |
・都道府県は、その設置する知的障害者更生相談所に、知的障害者福祉司を置かなければならない。 ・市町村は、その設置する福祉事務所に、知的障害者福祉司を置くことができる。 |
それでは,今日の問題です。
第30回・問題62 知的障害者更生相談所の業務などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 緊急時に知的障害者の一時保護を行う。
2 知的障害者の医学的,心理学的及び職能的判定を行う。
3 成年後見人の選任を行う。
4 社会福祉士を配置しなければならない。
5 精神保健福祉士を配置しなければならない。
国家試験では,1科目の問題数は少ないため,出題されるものは限られます。
現時点では「障害者」の科目は7問出題されているので,たとえ4年間の問題を完璧に覚えてもわずか28問しかありません。
そんな量では,出題基準に示される内容をカバーできるわけがありません。
知的障害者福祉法に関する出題は少ないので,過去問で勉強してもなかなか出てきません。
この問題は,そういった意味でレアケースのものなので貴重です。別な言い方をすれば,過去問で勉強していた人は,解けない問題です。
だから参考書に書かれたものを覚えていく勉強が欠かせません。
それでは解説です。
1 緊急時に知的障害者の一時保護を行う。
こんな規定はありません。勉強不足の人は,こういった記述があると慌てます。
そして混乱します。
そのため試験委員が意識してそう作っているかどうかはわかりませんが,難易度を高めます。
2 知的障害者の医学的,心理学的及び職能的判定を行う。
これが正解です。
知的障害者更生相談所の役割では,これが重要です。
専門機関でないと判定を行うことが難しいからです。
しかし,知的障害者更生相談所は,都道府県に設置されるので,住民にとって距離が遠すぎます。
そのために,巡回して業務を行うことができることをあえて法で規定しています。
これらの規定は,身体障害者更生相談所も同じです。
3 成年後見人の選任を行う。
成年後見人の選任は,申立権者の請求により,家庭裁判所が行います。
4 社会福祉士を配置しなければならない。
現在のところ,社会福祉士を配置しなければならないのは,地域包括支援センターしかありません。
この手の問題が出題されたらすぐ消去しなければなりません。
5 精神保健福祉士を配置しなければならない。
知的障害者更生相談所に配置しなければならないのは,知的障害者福祉司です。
社会福祉士の資格を持っている者は,実務経験なしで知的障害者福祉司として任用されます。