今回は,前説なしで問題を紹介します。
第30回・問題88 質問紙調査の方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査法は,返送時に氏名を記入する必要があるため,匿名性を確保するのが難しい。
2 訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
3 複雑で難しい質問には,自記式で質問紙に記入する方法が適している。
4 留置調査法は,他記式なので,記入漏れや記入ミスを抑制できる。
5 調査対象者本人の回答であるかを確認するには,他記式による記入が望ましい。
この問題を正解するためには,それぞれの調査票についての知識があることは当然ですが,その知識を使って,答えを考えるというもう一段階高い問題となっています。
解説を一度聞くとそれほど難しくは感じないと思いますが,初見で答えを考えるのは意外と難しいものです。
この問題が難しい理由の一つは,自記式と他記式がわかりにくいことがあります。
勉強不足の人はおそらく間違えます。
自記式とは,調査対象者が記入する方法です。
他記式とは,調査者が記入する方法です。
それでは,解説です。
1 郵送調査法は,返送時に氏名を記入する必要があるため,匿名性を確保するのが難しい。
郵送調査法は,調査票を郵送し,返送も郵送で行われるものです。
返送時に指名を記入する必要はありません。
郵送調査法は,匿名性の確保をしやすい調査法です。
2 訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
一見するとこれが正解だと思う人もいるはずです。
面接は対面で聞き取りしながら行うので,調査者に遠慮してしまうこともあります。
プライバシーにかかわるものは,匿名性が高い郵送調査法が適しています。
3 複雑で難しい質問には,自記式で質問紙に記入する方法が適している。
自記式は,調査対象者が記入するものです。
わかりやすい質問が適しています。
複雑で難しい質問は,調査対象者の理解度に合わせて適宜説明などを加える必要があるので,他記式が適していると言えます。
4 留置調査法は,他記式なので,記入漏れや記入ミスを抑制できる。
留置調査法は,調査票を配布して,後日回収する方法です。
まず間違いなのは,留置調査法は自記式であることです。
記入漏れや記入ミスなどを抑制するなら,他記式が向いています。
5 調査対象者本人の回答であるかを確認するには,他記式による記入が望ましい。
これが正解です。
留置調査法を考えるとわかりやすいでしょう。
自記式ですが,記入している場を調査員が確認しないので,別の人が記入しているかもしれません。
その点,他記式は調査者が記入するので,本人が回答したのかどうかは明らかでしょう。