2021年6月20日日曜日

民法における扶養の規定

今回は民法が規定する扶養を学んでいきたいと思います。

 

民法の扶養の規定

(扶養義務者)

第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

 

(扶養の順位)

第八百七十八条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

 

(扶養の程度又は方法)

第八百七十九条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

 

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)

第八百八十条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

 

(扶養請求権の処分の禁止)

第八百八十一条 扶養を受ける権利は、処分することができない。

 

 

扶養義務があるのは,

・直系血族

・兄弟姉妹

 

家庭裁判所の審判によって扶養義務を負うことがあるのは,

・三親等内の親族

 

親族の範囲は

・六親等内の血族

・配偶者

・三親等内の姻族

 

四~六親等の血族も親族ですが,扶養の義務を負うことはありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題80 事例を読んで,次の親族関係における民法上の扶養に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 L(80)には長男(55)と次男(50)がいるが,配偶者と死別し,現在は独居である。長男は妻と子(25)の三人で自己所有の一戸建住居で暮らし,次男は妻と重症心身障害のある子(15)の三人でアパートで暮らしている。最近,Lは認知症が進行し,介護の必要性も増し,介護サービス利用料などの負担が増えて経済的にも困窮してきた。

1 長男と次男がLの扶養の順序について協議できない場合には,家庭裁判所がこれを定める。

2 長男及び次男には,扶養義務の一環として,Lの成年後見制度利用のための審判請求を行う義務がある。

3 長男の自宅に空き部屋がある場合には,長男はLを引き取って扶養する義務がある。

4 次男が生活に困窮した場合,Lは,長男に対する扶養請求権を次男に譲渡することができる。

5 長男の子と次男の子以外の者が全て死亡したときには,長男の子は次男の子を扶養する義務を負う。

 

 

この事例の登場人物は,

 

・本人

・長男

・次男

 

の3人です。

 

長男と次男は生まれた順番が違うだけで,民法上の子という立場は同じなので比較的シンプルな構成の事例です。

 

しかし,事例の場合は読み間違ったりする恐れがあるので,登場人物に印をつけたり,場合によっては,相関図を空きスペースに書き込むことなどの工夫をするようにしましょう。

 

それでは解説です。

 

1 長男と次男がLの扶養の順序について協議できない場合には,家庭裁判所がこれを定める。

 

これが正解です。

 

長男と次男は,直系親族なので,いずれも扶養義務があります。

長男が扶養の第一順位ではありません。

 

扶養の順位は,協議によって決めますが,決められない場合は,家庭裁判所が決定します。

これは,離婚したときの子の親権者の決定と同じ仕組みです。

 

2 長男及び次男には,扶養義務の一環として,Lの成年後見制度利用のための審判請求を行う義務がある。

 

成年後見等開始の審判の請求は,四親等以内の親族が行うことができます。

 

長男及び次男は,四親等以内の親族ですが,審判請求を行う権利を持っているだけであり,義務ではありません。

 

3 長男の自宅に空き部屋がある場合には,長男はLを引き取って扶養する義務がある。

 

一般的には,長男が親の扶養をしなければならないような風潮がありますが,民法上は,長子が優先されるということはありません。

 

それよりもこの事例で重要なことは,空き部屋があることは扶養の要件ではないことです。

 

4 次男が生活に困窮した場合,Lは,長男に対する扶養請求権を次男に譲渡することができる。

 

扶養請求権は,譲渡することができません。

 

5 長男の子と次男の子以外の者が全て死亡したときには,長男の子は次男の子を扶養する義務を負う。

 

長男の子と次男の子は,四親等なので扶養義務はありません。

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