医療ソーシャルワーカーなど一部の職種を除けば,社会福祉士の資格を持たなくても仕事はできます。業務独占の資格ではないからです。
それにもかかわらず,ハードルの高い社会福祉士を目指すのはなぜなのでしょうか。
国家資格保持者であるという信頼感を得ることかもしれません。
外部から見るとそうかもしれません。
それと同時に,内部の変化は重要です。
社会福祉士を目指す過程で学ぶことは,経験では学ぶ機会はまずないと言えます。
現場で働く人にとって,身近な制度を知っているのは当然のことです。現場実践とは少しかけ離れたものを学ぶからこそ,社会福祉士を取得する意義があると考えます。
社会調査は,新しい科目では,社会福祉調査という科目になります。
以前のカリキュラムでは科目こそなかったですが,その当時は社会福祉調査という用語を使って出題されていました。
社会調査という用語に置き換わったことが,距離を感じることになった要因となったのではないかと思います。
カリキュラムには,社会福祉士に必要な知識・価値・実践力をつけるための内容が詰め込まれています。
ムダなものは一つもありません。
さて,今日のテーマは,標本誤差と測定誤差です。
社会福祉調査は,量的調査と質的調査に分類されます。
そのうち,量的調査は,母集団の性質を探るために行うものです。
母集団の成員をすべて調査すれば,全数調査となり,一部を取り出て調査すれば標本調査となります。
標本誤差とは,母集団だと性質のずれのことです。
標本誤差は,標本調査である限り,必ず発生します。そのため,いかに母集団とのずれが小さくなるように標本を抽出するかが重要です。
有意抽出と無作為抽出では,標本誤差が小さいのは,無作為抽出の場合です。
測定誤差とは,標本誤差以外の誤差(エラー)のことです。無回答や回答の内容を間違えた,記入箇所を間違えた,などです。
そういった誤差なので,全数調査,標本調査にかかわらず起きます。
それでは今日の問題です。
第30回・問題86 全数調査と標本調査に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 標本調査の場合,測定誤差は生じない。
2 無作為抽出による標本調査の場合,母集団の性質について統計的に推測できる。
3 標本調査の場合,標本誤差は生じない。
4 全数調査の場合,測定誤差は生じない。
5 全数調査の場合,母集団から一部を取り出し,取り出した全員を対象に調査する。
問題に文句を言うと,美しくない選択肢の並びです。
1 標本調査の場合,測定誤差は生じない。 2 標本調査の場合,標本誤差は生じない。 3 全数調査の場合,測定誤差は生じない。 4 全数調査の場合,母集団から一部を取り出し,取り出した全員を対象に調査する。 5 無作為抽出による標本調査の場合,母集団の性質について統計的に推測できる。 |
こういった並びだとセンスがよいと思いますが,試験委員も受験者もそんなことは関係ないのでしょう。
それでは,解説です。
1 標本調査の場合,測定誤差は生じない。
測定誤差は,全数調査でも標本調査でも生じます。
2 無作為抽出による標本調査の場合,母集団の性質について統計的に推測できる。
これが正解です。
標本調査には,有意抽出と無作為抽出がありますが,母集団の性質を統計的に推測できるのは,無作為抽出です。
有意抽出は,抽出した標本に偏りが生じるので,母集団の性質とのずれが大きくなります。
3 標本調査の場合,標本誤差は生じない。
標本調査である限り,標本誤差をなくすことはできません。
それをいかに小さくするかが重要です。
そのためにさまざまな抽出方法が開発されています。
4 全数調査の場合,測定誤差は生じない。
全数調査でも標本調査でも測定誤差は生じます。
5 全数調査の場合,母集団から一部を取り出し,取り出した全員を対象に調査する。
全数調査は,母集団すべてを調査します。母集団の一部を取り出すのは標本調査です。