2021年6月15日火曜日

医師法に規定された医師の業務

今回のテーマは医師法ですが,医師法を読む機会はあまりないのではないでしょうか。

 

医師の業務は,以下のように規定されています。

 

医師の業務

第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

第十八条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

第二十一条 医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

第二十二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。

一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合

二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合

三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合

四 診断又は治療方法の決定していない場合

五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合

六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合

七 覚せい剤を投与する場合

八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合

第二十三条 医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。

第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

第二十四条の二 厚生労働大臣は、公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合において、その危害を防止するため特に必要があると認めるときは、医師に対して、医療又は保健指導に関し必要な指示をすることができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による指示をするに当つては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

 

 

それでは今日の問題です。

 

30回・問題75 医師法に規定された医師の業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。

2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。

3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。

4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。

5 患者の保健指導は義務とはならない。

 

医師法を勉強しなくても正解できそうですが,一応解説します。

 

1 時間外の診療治療の求めに対しては,診療を断る権利がある。

 

以下のように応酬義務はありますが,診療時間外・勤務時間外である場合は,診療しないことが正当化されます。

 

しかし,権利ではありません。

 

〈応酬義務〉

第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

 

患者を診療しないことが正当化される事例

・診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合

 応急的に必要な処置をとることが望ましいが、原則、公法上・私法上の責任に問われることはない(※)。

※ 必要な処置をとった場合においても、医療設備が不十分なことが想定されるため、求められる対応の程度は低い。(例えば、心肺蘇生法等の応急処置の実施等)

※ 診療所等の医療機関へ直接患者が来院した場合、必要な処置を行った上で、救急対応の可能な病院等の医療機関に対応を依頼するのが望ましい。

 

2 医師の名称は独占ではないが,医師の業務は独占である。

 

第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

第十八条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

 

医師は,名称独占であり,業務独占です。

 

3 処方せんの交付は薬剤師に委任できない。

 

これが正解です。

 

第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

 

処方せんの交付は,自ら診察して交付することが必要です。

 

処方は,薬剤師が行うことができますが,処方せんの交付は医師でなければ行うことができません。

 

4 診療録の記載は義務となるが,その保存は義務とはならない。

 

第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。

2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

 

診療録の記載もその保存も義務です。

 

5 患者の保健指導は義務とはならない。

 

第二十三条 医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。

 

患者の保健指導は医師の義務です。

最新の記事

ソーシャルワーク4科目で合格をつかむ

ソーシャルワーク系の4科目は,社会福祉士になるためにはとても重要な科目です。 今日は,そのうちの共通科目の「ソーシャルワークの基盤と専門職」です。 少し難しいかもしれませんが,しっかり覚えれば点数を稼ぐ科目になります。 それでは,今日の問題です。 第26回・問題91  2007年...

過去一週間でよく読まれている記事