今回は,横断調査と縦断調査を取り上げます。
横断調査 |
ある時点で行う調査。 |
縦断調査 |
一定の期間を開けて,複数回行う調査。 同じ対象者(パネル)に対して複数回行うパネル調査は縦断調査の一つ。 |
それでは,今日の問題です。
第30回・問題87 横断調査と縦断調査に関する次の記述.のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 トレンド調査とは,同一対象者を継時的に追跡することを通じて,調査対象者の変化を知ろうとする調査法である。
2 同じ調査票を用いて,4月にR市,5月にS市で調査を行えば,縦断調査といえる。
3 パネル調査では,調査の回数を重ねるにつれてサンプル数が増加する。
4 横断調査は,ある一時点での特定の市で実施する市民意識調査は含まれない。
5 横断調査では,因果関係を特定するに当たり制約が伴う。
結構難しい問題です。
応用力が必要な問題かもしれません。
それでは,解説です。
1 トレンド調査とは,同一対象者を継時的に追跡することを通じて,調査対象者の変化を知ろうとする調査法である。
同一対象者を継時的に追跡することを通じて,調査対象者の変化を知ろうとする調査法は,パネル調査です。
トレンド調査も縦断調査の一つですが,パネル調査と異なる点は,調査対象者は,同じ定義にあてはまる人であることです。
2 同じ調査票を用いて,4月にR市,5月にS市で調査を行えば,縦断調査といえる。
R市,S市を対象として調査を行っていますが,それぞれ一回きりの調査なので,横断調査です。
3 パネル調査では,調査の回数を重ねるにつれてサンプル数が増加する。
パネル調査は,同じ人に対して,経時的に調査を行うため,調査対象者の都合によって,2回目,3回目と人数が減っていきます。
減らないこともあるかもしれませんが,少なくとも増加するということはありません。
調査の回数を重ねるにつれてサンプル数が減少することは,パネルの摩耗,あるいはパネルの脱落といいます。
4 横断調査は,ある一時点での特定の市で実施する市民意識調査は含まれない。
1回きりの調査は,横断調査です。
市民意識調査を複数回行うと縦断調査となります。
5 横断調査では,因果関係を特定するに当たり制約が伴う。
これが正解です。
因果関係とは,原因と結果につながりがあることをいいます。
たとえば,「学習部屋」の有効性について調べたいとします。
学習部屋に毎日訪れている人を対象にして,複数の模試を受験した結果を調査します。
1回きりでは,対象者の成績が伸びたのかを検証するのは難しいと言えます。
間を空けて模試を受験してもらって,成績を比較します。
点数が伸びていれば,「学習部屋」は,学力を伸ばすのに有効だったという結論が導き出せそうです。