ターミナル期の苦痛(ペイン)には以下のものがあると言われています。
・フィジカルペイン
・メンタルペイン
・ソーシャルペイン
・スピリチュアルペイン
緩和ケアチームは,これらの苦痛をもつ患者に寄り添い,支援していきます。
フィジカルペインへの支援は,医療職の役割です。
それ以外は,医療ソーシャルワーカーも寄り添うことができることでしょう。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題76 事例を読んで,緩和ケア病棟における緩和ケアチームの各専門職の視点と役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Kさん(45歳,男性)は,肝がんにより入院中で余命3か月と告知された。疼痛は強く,時折,精神的に不安定な状態になる。Kさんは,残された時間を家族と共に自宅で生活をしたいと医療ソーシャルワーカー(以下,「MSW」という。)に申し出た。緩和ケアチームである緩和ケア医,がん看護専門看護師,薬剤師,管理栄養士,MSWはカンファレンスを開催し,各々の視点と役割を確認した。
1 緩和ケア医は,Kさんの延命を目的とした抗がん剤治療を勧める。
2 薬剤師は,投薬内容に疑問を持ったが,医師の指示通りに調剤する。
3 管理栄養士は,KさんのQOLを考えた栄養指導を計画する。
4 MSWは,Kさんの状態の悪化を予測し,事前に転院先を選定する。
5 がん看護専門看護師は,在宅医療を想定して訪問看護師への指示書を作成する。
この事例では,医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,MSWで緩和ケアチームを組織していますが,今後は公認心理師を含めて出題されてくることがあるかもしれません。
公認心理師と社会福祉士の性格が決定的に違うのは,公認心理師はクライエントに主治医がいた場合,主治医の「指示」を受けなければならないことです。
社会福祉士と医師の関係は「連携」です。
それでは,解説です。
1 緩和ケア医は,Kさんの延命を目的とした抗がん剤治療を勧める。
Kさんの希望は,残された時間を家族とともに自宅で過ごすことです。
延命治療は望んでいません。
2 薬剤師は,投薬内容に疑問を持ったが,医師の指示通りに調剤する。
薬剤師は,薬剤師法に基づく専門職です。
薬剤師法では,処方せん中の疑義についての規定があります。
第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。
この規定に反した場合は,「一年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という罰則が規定されています。
実際に過去には,医師の処方せんが汚くて読みにくくて,一桁違う量の薬剤を処方したという医療事故がありました。
医師に確認しにくくても確認することは,法で規定されることであり,自分の身を守ることでもあります。
3 管理栄養士は,KさんのQOLを考えた栄養指導を計画する。
管理栄養士は,栄養士法で規定される専門職です。
これが正解です。ここでは栄養指導という表現を用いていますが,食事はQOLにとても大きな影響をもちます。
本当に重要ですね。
4 MSWは,Kさんの状態の悪化を予測し,事前に転院先を選定する。
ようやく医療ソーシャルワーカーの番です。本音を言えば,この選択肢を正解にして組み立てて欲しかったものです。
もし入院が必要だとしたら,それはKさんがそのように希望した場合です。
5 がん看護専門看護師は,在宅医療を想定して訪問看護師への指示書を作成する。
看護師は,保健師助産師看護師法に規定された専門職です。
訪問看護師への指示書を作成するのは医師の役割です。
がん専門看護師が訪問看護師と連携するとすれば,療養上の世話に関するアドバイスでしょう。