今回は,「生活保護の被保護者調査」を取り上げたいと思います。
これに限らず,社会福祉士の国家試験の出題には,ある基本ルールがみられます。
・年度によって順位が入れ替わるものは,出題されない。
・年度によって大きく数値が変わるものは,出題されない。
・小さな差を問う出題はされない。
ごくたまに基本ルールを無視したものもありますが,めったにみられないレアケースです。
基本ルールを知らないのか,めったにみられないレアケースに着目しているためなのか,よくわかりませんが,「変化があったところは要注意」と言う先生がいます。
しかし,はっきり言えば,逆にそういったものは,覚える優先度は限りなく低いものです。
社会福祉士の国家試験では,傾向が明確なものを選んで出題しています。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題64 「生活保護の被保護者調査(平成27年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)による次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護率(人口百対)は,17.0%である。
2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は,約80万人である。
3 保護の開始の主な理由のうち,「傷病」が最も多い。
4 保護の廃止の主な理由のうち,「死亡」が最も多い。
5 保護の種類別に扶助人員をみると,「医療扶助」が最も多い。
生活保護の動向は,「生活保護の被保護者調査」から出題されていますが,数値が明確なので,極めて覚えやすいものです。
しかも,先に述べたような基本ルールにのっとった出題がみられるので,この問題のようにかなり前の出題であっても,今もそのまま学べます。
つまり過去問を使った勉強が効果的になります。
それでは,解説です。
1 保護率(人口百対)は,17.0%である。
保護率の出題は,ちょっとだけ注意が必要です。古くは,パーミル(‰)で出題されてきましたが,この時からパーセント(%)で出題されています。
パーミルは,千分率と言って,1000分の1を単位とします。
パーセントは,なじみ深いものですが,百分率と言って,100分の1を単位とします。
現在の保護率は,だいたい1.7パーセントです。
2 被保護実人員数(保護停止中を含む)は,約80万人である。
この選択肢は特徴的です。
現在の被保護実人員数は,200万人を超えています。しかしこの選択肢は80万人というように大きく数値を変えて出題しています。
これでわかるように,覚えるべき数値は,ざっくりで良いです。
勉強中に,新しい報告書が出ると「どの数値を覚えたら良いの?」と焦る人はいますが,そんなことを気にすることはありません。
細かい数値まで問われる出題はされないからです。
被保護実人員数は,200万人を超えている
こういった覚え方で十分です。
3 保護の開始の主な理由のうち,「傷病」が最も多い。
この数値も特徴です。
かつては,傷病が最も多かったのですが,その後,順位が入れ替わり,現在は,「貯金等の減少・喪失」が最も多くなっています。
実は,これは久しぶりの出題でした。1位と2位の数値が大きく差がついたタイミングで出題されたのです。
4 保護の廃止の主な理由のうち,「死亡」が最も多い。
これが正解です。
保護の開始理由の順位は,入れ替わっていますが,廃止理由は,死亡がずっと1位です。
順位の2位を問う出題はないので,覚える時はひたすら順位の1位のものだけを覚えるようにします。
2位以下も覚えると混乱の原因となります。
5 保護の種類別に扶助人員をみると,「医療扶助」が最も多い。
医療扶助は要注意です。
医療扶助が最も多いのは,保護費です。費用全体の全体の半分を占めます。
しかし,扶助人員で最も多いのは,生活扶助です。
ここを整理して理解しておく必要があります。